弁護士視点で知財ニュース解説

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ビール産地名の保護へ

cont_img_50.jpg政府は,平成27年7月6日,ビールの商品名に使われる著名な産地名を「地理的表示(GI)」として保護する方針を固めたと公表しました。

ウイスキーなどの蒸留酒やワイン,清酒で産地と関係ない商品への使用を禁じた酒類業組合法を平成27年秋にも改正し,蒸留酒,ワイン,清酒に加えてビールも対象に加える予定です。

地理的表示保護制度とは,特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)によって設けられた制度であり,品質,社会的評価その他の確立した特性が産地と結び付いている産品について,その名称を知的財産として保護するもので,平成27年6月1日から申請の受付が開始しています。

生産・加工業者の団体が「地理的表示」を生産地や品質等の基準とともに登録申請を行うと,農林水産大臣が審査の上で地理的表示及び団体を登録します。なお,登録が認められると「GI」マークの使用が認められます。

登録を受けた団体に加入した生産者は,「GI」マークの使用が認められ,登録を受けた団体は生産者に対して品質管理を実施し,農林水産大臣が団体の品質管理体制をチェックすることにより登録された品質の維持に努めます。

また,「GI」マークの不正使用者がいる場合には,農林水産大臣が通報を受け消去命令等を発することになります。

現在,EUとの経済連携協定(EPA)交渉において,EU側から域内で保護されている酒類の産地名を守るよう要求されており,日本国内での「GI」認定対象などを明確化することになりそうです。

この「GI」マークは商標制度と抵触する可能性があり,「GI」と商標権の優先関係については各国において異なる制度が採用されています。

たとえば,アメリカにおいては商標権を優先させる立場が採用されており,他方,欧州においては「GI」を優先する立場がとられています。

「GI」の保護については,環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉においても問題となっており,参加国内でも意見が分かれているところです。

日本においては,現在,「GI」と商標権の関係が法律上で明らかとされておらず,海外で認定済みのGIであったとしても日本の商標権を侵害するおそれがある場合には保護の対象としないこととし,法においてもこのことを明記し,商標権を優先することを明らかにするようです。

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