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二次創作はカルチャー

cont_img_81.jpg現在の日本の著作権法では,公開していない死者の著作物を公開した場合など限定的な場合を除き,権利者から告訴が行われない限り,捜査機関が著作権侵害に対して捜査するということはなく(告訴がない限り捜査機関が捜査を開始でき犯罪を「親告罪」といいます。),著作権侵害の問題は,基本的に民事上の問題として取り扱われています。

ところが,TPP(環太平洋経済連携協定)交渉においては,アメリカなどが,著作権の保護期間の伸長,著作権侵害の場合の損額賠償額の高額化とともに,著作権侵害を親告罪としない(非親告罪化・告訴がなくても,捜査機関の判断によって捜査を開始することができる)ことを求めており,日本も著作権侵害の非親告罪化について検討を行っているところです。

日本では,コミックのパロディーやアニメやコミックのキャラクターをアレンジしたフィギュアの市場(コミケ)が存在し,いわゆる「パロディー」として世間でも浸透しています。

パロディーは,フランスなどのヨーロッパの国においては,歴史的に芸術表現の一つとして広く受け入れられており,これを表現の自由の一つとして一定ものが認められています。

ところが,日本の最高裁は,「自己の著作物を創作するにあたり,他人の著作物を素材として利用することは,勿論許されないことではないが,右他人の許諾なくして利用することが許されるのは,他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴をそれ自体として直接感得させないような態様においてこれを利用する場合に限られる」とし,パロディーという表現方法を否定しています。

この結果,著作権者の許可を得ることなくパロディー漫画を制作することや,アニメやコミックのキャラクターを素材としたフィギュアを制作する行為は,翻案権侵害(パロディーに新たな創作性が認められない場合には複製権侵害),同一性保持権侵害(翻案権侵害の場合のみ)となります。

現在の著作権法では,著作権者が許諾していないパロディー漫画やアニメやコミックのキャラクターを素材としたフィギュアの販売は民事上の問題であり,著作権者や管理者が差止めや損害賠償求めるということも少なかったため一大市場に成長しており,多くの者の間で,「二次創作はカルチャー」であるという認識まで芽生えています。

著作者や管理者がこのようなパロディー市場を放置してきた理由は,パロディーが存在することで原作の売れ行きが良くなる,原作が復刻されるなど,パロディー市場の経済的な波及効果が認められるからであると想像しています。

また,著作権者や管理者の中には,コミケが開催される期間のみパロディーの販売を許可する「一日版権」を付与する者も現れており,著作権者サイドがパロディー市場を積極的に利用する動きも存在します。

パロディーは,表現の自由という文化的な面だけでなく,経済的な面からも社会に影響を及ぼす存在になっているわけですから,法律の委縮効果によりパロディー市場を委縮させることは大きな社会的ロスといえると思います。

パロディーの中には,確立された原作キャラクターのイメージを著しく損なうものも少なからず存在し,このようなものは著作者としても放置することはできないでしょうから捜査機関の取締りの対象に含めてもよいと思います。

しかし,多くのパロディーは,原作のキャラクターとも共存できる存在であると考えており,これらが法律の委縮効果により制限されてしまうというのは残念なことです。

日本の著作権法が著作権侵害について非親告罪化を導入するか否か,導入するとしてどのような侵害態様について非親告罪化するかの議論は,まだ十分ではなく,これから行われるべきものですが,パロディーの問題は法制度上の問題として理解するのではなく,基本的には,権利者とこれを利用しようとする者との対話の問題であると考えています。

つまり,著作権者あるいは管理者とパロディーの制作を望む者とが,例えば,期間,場所などを限定してパロディーを制作,販売することについて,容易に協議することができる場が確立し,著作権者あるいは管理者側としてもパロディーを許可する基準を明確にし,基準をクリアーしたものについては原則としてパロディーを許可するという制度を作り上げていけばよいと思います。

このような制度が確立すれば著作者や管理者を悩ませているキャラクターのイメージを著しく損なうものを排除できるうえに,法制度とは関係なくパロディーに対する委縮効果を払拭することができると考えています。

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