弁護士視点で知財ニュース解説

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地域団体商標「小田原かまぼこ」をめぐって訴訟

cont_img_23.jpgかまぼこ業者らによって構成される小田原蒲鉾協同組合は,保有する地域団体商標「小田原かまぼこ」などを無断使用したとして,食品加工業者2社に対し,「小田原かまぼこ」などの使用差止めと,約5,000万円の損害賠償を求める訴訟を横浜地裁小田原支部に提起しました。

地域団体商標制度は平成18 年に導入された制度であり,地域名と当該地域特有の商品名やサービス名とを組合わせた名称を商標として登録することを認める制度です。

地域団体商標は,各地域の特産品やサービスを他地域の同種商品やサービスと差別化することにより,特定の地域が獲得してきた商品やサービスの質,知名度といったものを特定の地域に帰属するものとして法的に保護しようとするものです。

このような地域団体商標制度から,出願できるのは,地域の事業協同組合,農業協同組合等の組合,商工会,商工会議所,NPO 法人等に限られており,これらの団体が構成員に使用させる商標であることが前提となります。
また,地域団体商標は,地域名と商品名あるいはサービス名によって構成されたものであり,これを地域と密接に関連している商品やサービスに使用していること,一定の地理的範囲である程度認識されるに至っていることが必要となります。

地域団体商標の登録例は多数あり,比内地鶏,米沢牛,関あじ,関さば等を例として挙げることができ,平成28年4月時点で592件が登録されています。

地域団体商標は,通常の商標と同様に,無断で使用する者に対し,使用差止請求や損害賠償請求を行うことができるのですが,権利行使をするのは,あくまで権利者である団体となります。

地域団体商標を取得した団体は,差止請求権や損害賠償請求権を行使することによって,団体の構成員以外に地域団体商標の使用を禁止することにより,地域ブランドを自ら守り,育てていくことができ,地域産業の活性化や地域おこしにの方法として使用されているところです。

地域団体商標は,一定の地理的範囲である程度認識されていること,権利を取得した団体が登録されていることを周知していることが影響して,訴訟に至る事例は多くありません。
今回の「小田原かまぼこ」は,地域団体商標に関する数少ない事例の一つであるといえます。

ところで,地域団体商標は団体への加入の自由が保障された組合にしか登録が認められていません。
地域団体商標は,団体の構成員に使用させることを前提として法律で定められた一定の団体の商標権という独占権を付与し,当該団体に地域団体商標の管理を委託しているという側面があります。

団体が不合理な基準で加入者を選別することにより,地域団体商標を使用できる者を選別するという事態が起こらないように,加入の自由が保障された団体にのみ地域団体商標の取得が認められているのです。

過去に,組合による権利行使が権利濫用であると判断された理由の一つに,大手企業であるということを理由に組合への加入を拒否したという事情が考慮された裁判例があります(福岡高裁平成26年1月29日判決・博多織事件)。

この事件では,不合理な理由による加入拒否があることだけで地域団体商標の権利行使が認められなくなったわけではありませんので,不合理な加入拒否と権利行使不能とが直結するとまで言うことはできません。
しかし,団体加入を望む者がいる場合には,特定の団体に地域団体商標が付与されている趣旨を踏まえて,加入の許否を検討する必要があることを示しているものといえます。

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