改造した「ポケモンGOプラス」を販売していた男性が,商標権侵害違反の疑いで逮捕されたという報道が行われています。
「ポケモンGOプラス」は,スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」に対応する機器で,ポケモンの接近を知らせてくれる腕時計型の機器ですが,男性が販売していたのは,自動でポケモンを捕まえるよう改造を加えたものでした。
男性は,任天堂が販売しているものに改造を加えて販売し,購入する方も,任天堂が販売している機器に男性が改造を施したものとして購入しています。
商標は,他の商品と区別するもの,商品やサービスの出所を示すものですから,販売していた男性も購入した側も,「ポケモンGOプラス」という商品であることを認識できており,商品の出所についても偽りや,誤解をしていないのですから,商標権を侵害するという評価に違和感を抱く方も少なくないと思います。
しかし,商標には,他の商品と区別する機能や出所を表示する機能のほかに,品質を保証する機能や,宣伝広告をする機能があります。 そして,商標権者は,最初に流通過程に置いたそのままの状態で最終の消費者の手に渡ることを期待しており,商標の機能も,真正品がそのままの姿で流通過程を経ることによって最大限の機能を発揮するものと考えられています。
真正品に改造を加える行為は,真正品がそのままの姿で最終消費者の手にわたるという商標権者の期待や商標権の各種機能を損ねることになるため,商標権を侵害すると考えられているのです。
ここで注意を要するのは,改造という当初の機能とは異なる機能をもつようする行為だけが商標権侵害になるのではなく,販売されている商品の品質を変えることなく行う「小分け」や「詰め替え」を行って再包装を行い,商標を付して販売した場合には商標権侵害なるというのが裁判所の考え方です。
裁判例では,商品が真正であるか否かを問わず,小分け等によって商品の品質に変化をきたすおそれがあるか否かを問わず,商標権侵害になると判断しているものもあります。
商標法では,商品又は商品の包装に商標を付する行為や,商品や商品の包装に商標を付したものを販売する行為が,商標権を侵害すると規定されていますので,「小分け」や「詰め替え」による販売は,商標権侵害になるのです。
商標権者が流通に置いた状態で最終の消費者にまで届くという期待を損ねる行為は,商標権侵害になるということに留意する必要があります。
そして,今回の改造のように故意に商標権を侵害する行為は,刑事罰の対象になるということも忘れないでください。