弁護士視点で知財ニュース解説

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コピー商品販売事件から見える商標法の問題点

intellectual_01.jpgコピー商品の販売を警察が検挙したという報道を頻繁に目にすることになりました。

商標法には刑事罰に関する規定があります。

故意に他人の登録商標を侵害した場合には,10年以下の懲役,1000万円以下の罰金,場合によっては懲役刑と罰金刑の両方が課されることになります。

大阪市に住む無職の女性がシャネルの偽バックを販売していたとして,京都府警下京署がこの女性を逮捕しました。

この女性は,無地のバッグを安く購入して,転写シートでシャネルなど高級ブランドのロゴマークをプリントしてバッグを自作し,ネットオークションで「非売品」として出品し,販売していたようです。

警察は,インターネットオークションで,この女性から2点のバックを購入し,捜査をしたところ,自宅に偽ブランド品を120点程度が見つかったようです。

この女性が偽ブランド品を「非売品」として販売していた理由,他方で,警察が捜査の対象となる女性が繰り返し複数の偽ブランド品を販売していた証拠をつかもうとした理由は,商標法における商標の定義と関係します。

商標法では,商標とは,「人の知覚によって認識することができるもののうち,文字,図形,記号,立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合,音その他政令で定めるものであって」,「業として商品を生産し,証明し,又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」をいうと規定されています。

つまり,商品を生産し,譲渡する者が,標識となる文字,図形などで構成されたものを,その商品について使用していたとしても,それを「業として」行っていなければ,商品に付された文字,図形などで構成された標識が登録商標と酷似していたとしても,それは商標ではなく,商標を使用したことにはならないのです。cont_img_69.jpg

登録商標と酷似した標識が,「業として」使用されているか否かによって商標であったり,商標でなかったりするということは,一般的な感覚からすれば非常に違和感があるのではないでしょうか。

本来,商品を生産し,譲渡する者が,標識となる文字,図形などで構成されたものを,その商品について使用する場合,業として行うか否かにかかわらず,商標であるべきです。

そして,商標法が「業として」使用しているものを商標権侵害として問題にするというのであれば,商標権を侵害する行為の要件として「業として」という要件を加えるべきであると考えます。

商標法が前記したように商標を定義づけるものですから,偽ブランドを購入し,それを購入者自身で使用する場合,販売していた人のもとでは商標であるものの,購入した人のもとでは商標ではないという理解しがたい現象が生じることになるのです。

このような多くの方にとって理解しがたいような商標の定義は,社会に無用の混乱をもたらせるだけですので,早急に商標法を改正するべきであると考えています。

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