弁護士視点で知財ニュース解説

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任天堂・コロプラ特許訴訟からみるゲーム業界の知財戦略

cont_img_67.jpgゲームが「映画の著作物」であり著作権法によって保護されることは「ゲームバー問題」の記事で説明したとおりです。

ゲームが「映画の著作物」である以上,ゲームが展開する一連の画像を複製したり,それに基づいて改変を加えると著作権の一つである複製権や翻案権を侵害することになります。

しかし,著作権法では,著作物が「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されているために,現に存在する表現物を基準に権利を侵害するか否かが判断されることになります。 また,複製や翻案した対象に創作性,すなわち,創作者の個性が認められるのかが問題となります。

具体的に表現されたものを複製したのか,それとも,表現のもとになるアイデアが似ているだけなのか,創作性のある部分が流用されているといえるかという判断は,非常に微妙な場合があります。

「釣りスタ」を配信していたグリーが,「釣りゲータウン2」を配信していたディー・エヌ・エーを訴えた訴訟では,「魚の引き寄せ画面」が問題となりました。

一審の東京地裁平成24年2月23日判決では,ディー・エヌ・エーの「魚の引き寄せ画面」は,グリーの「魚の引き寄せ画面」を翻案したものであり,翻案権を侵害し,著作者の同一性保持権を侵害すると判断し,ディー・エヌ・エーにゲームの配信差止めと2億3,460万円の支払いを命じました。

ところが,控訴審の知財高裁平成24年8月8日判決では,ディー・エヌ・エーの「魚の引き寄せ画面」は,アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分においてグリーの魚の引き寄せ画面と同一性を有するにすぎないものというほかなく,これに接する者が原告作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから翻案に当たらないと判断され,著作権侵害が否定されました。

グリーは,知財高裁の判断が不服であるとして,最高裁に上告しましたが,平成25年4月16日に上告は棄却されました。

この他にも,「プロ野球ドリームナイン」を配信していたコナミが,「大熱狂!!プロ野球カード」を配信していたグループスを訴えた訴訟で,東京地裁平成25年11月29日判決では,以下の共通点が認められるが,それ以外の具体的な表現には多くの相違点が認められるとして複製権侵害が否定されました。

  1. 画面上にパッケージが現れ,クリックすると当該パッケージはその上部が横方向に破られて開封され,
  2. 在中する選手カードがせり上がり,当該パッケージの開封部から当該選手カードの上部が露出し,続けて,当該パッケージが下方向に移動して画面下部に消えるとともに,
  3. 当該選手カードは当該パッケージから上方向に移動し, 画面全体が一瞬白く光り, 当該選手カードが上部に「NEW」という表記を伴って画面上に現れ,その背景には金色の後光が差している

また,東京地裁は,上記した1,2,3は,単なる事実の表現若,ありふれた表現にすぎないとし,コナミのゲームとグループスのゲームは,「選手ガチャ」において共通する点があるとはいえ,その共通する部分は,アイデアにすぎないか,ありふれた表現として創作性がない表現にすぎず,そもそも翻案に当たらないと判断し,翻案権侵害も否定しました。

コナミは,東京地裁の判決が不服であるとして知財高裁に控訴しましたが,知財高裁平成27年6月24日判決では,中島選手とダルビッシュ選手の選手カードについては,コナミの選手カードの翻案権と公衆送信権を侵害すると判断し,123,322円の著作権侵害による損害を認定しました。

平成24年の知財判決以降,ゲーム制作会社において,ゲームを映画の著作物として保護することの限界が意識されるようになり,ゲームの機能を特許権として保護することが重視されるようになったのではないでしょうか。cont_img_43.jpg

そして,ゲーム制作会社がひしめきあうような形で特許権を取得するようになったことで,今日のゲーム制作会社同士の特許訴訟の増加となって現れているのではないでしょうか。

任天堂が平成29年12月に,コロプラに対して,同社の主力スマホゲーム「白猫プロジェクト」が任天堂の特許権を侵害するとして訴訟を提起した件で,任天堂が求める損害賠償額は44億円と非常に高額です。

ゲーム制作会社は,特許訴訟のリスクを回避するため,同業他社の特許保有状況を把握した上で,他社の特許権を侵害しないようにゲームを制作していく必要があります。

このような特許権がひしめき合う状況が,ゲーム制作を停滞させるおそれがあるとの指摘があります。

任天堂とコロプラとの訴訟で問題となっている任天堂の特許の主なものを挙げますと,以下のとおりです。

  • タッチパネルでキャラクターを移動させる(特第3734820号)
  • タッチパネルの長押しで近くの相手を自動的に攻撃する等(特第4262217号)
  • 省電力モードからゲームに復帰する際に確認画面が介入する(特第4010533号)
  • 他の者と協力してプレイする,メッセージのやりとりを行う際の通信機能(特第5595991号)

いずれの機能もゲームを行う上で基本的な機能なであり,これらの技術が他社のゲーム制作を停滞させる可能性は否定できません。

他方で,他社が上記した機能を実現する場合に任天堂が特定した技術的解決手段を回避していれば特許を侵害しないことになります。

たとえば,タッチパネルでキャラクターを移動させる効果「X」を,「A」という技術要素,「B」という技術要素,「C」という技術要素,「D」という技術的要素で実現していたとします。

これを,仮に,以下のように表現します。

「X=A+B+C+D」

このような特許がある場合に,特許侵害ではないと主張するためには,実施している技術が, 「A」,「B」,「C」,「D」のいずれかの技術的要素と異なるといえなければなりません。

特定の機能を実現する場合に,任天堂が特許を取得した技術の技術的要素のいずれかを容易に回避することができるのであれば,他社のゲーム制作を停滞させることにはなりませんが,技術的にみて,これが困難な場合には他社のゲーム制作に大きな影響を及ぼすことになります。

また,任天堂が特許を取得した時点で,既に,公知の技術「X=A+B+C+E」が存在し,他の公知技術も考慮するならば「X=A+B+C+D」という技術を容易に発明することができるといえるのであれば,特許庁で特許を無効にすることができるだけでなく,裁判所での特許に基づく請求を回避することができます。

任天堂の特許が既に存在した技術から容易に発明することができるものであったかどうかについても,他社のゲーム開発に大きな影響を及ぼすことになります。

任天堂は,コロプラが6つの特許を侵害しているとして訴訟を行っていますので,一つ一つの特許について上記した主張,反論が繰り広げられることになります。

特許侵害訴訟は,1つの特許であっても膨大な量の書面や証拠が提出されることになります。

任天堂とコロプラの訴訟は,6つの特許が問題となるわけですから,両社とも訴訟に関与する弁護士が多数に及んでいると想像します。

任天堂とコロプラの訴訟は,請求金額が巨額であるということだけでなく,多くのゲームにおいて採用されている基本機能に関する特許であることから,ゲーム業界においても非常に注目されていますので,目を離すことができない事件の一つではないでしょうか。

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