弁護士視点で知財ニュース解説

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デザイン保護と商標法(1)

cont_img_68.jpg商品形態は,その商品が果たすべき機能を前提に,経済的要因,社会的要因,芸術的要因が相まって最終的な形態が決定づけられるものであって,商品の出所を表示するために形態が決定されるということは基本的にありません。

しかし,そのような商品形態であっても,長年市場に受け入れら,多くの方に使用されるという状態が継続する,あるいは,強力な広告を行うなどして,短期間であっても多くの方に使用されるようになると,商品を見ただけで,それを提供する業者を特定することができるようになります。

この場合,商品形態が出所表示機能を獲得したと評価されることになるわけですが,商品形態が獲得した出所表示機能に着眼して,商品形態を立体商標として登録することによって保護することを検討する必要があるわけです。

ただし,商法は,登録機関が10年と定めらえているものの更新手続を繰り返すことにより,事実上期間が限定されることなく保護されることになります。

出所表示機能を備えた商品形態を不正競争防止法により保護する場合(詳しい内容は,こちら)には,保護を求める都度,問題となる商品形態に類似する商品が販売されている営業エリアで周知な商品形態であるか,市場に混同を生じさせていないかというチェックを受けることになります。

そして,類似する商品が販売されている営業エリアごとに,周知性の要件や混同の要件がチェックされるため,差止めや損害賠償が認められる営業エリアと,これらが認められない営業エリアとが存在しうるわけです。これは,一般的に「穴あき現象」といわれているものです。

他方で,商品形態が立体商標として登録された場合には,商標権を行使する際に,そのようなチェックを受けることなく,日本全国一律に権利行使が認められることになります。

商品形態の保護を求める側としては,立体商標として登録しておくメリットが大きく,可能であれば商標登録を行っておきたいというのが本音でしょうが,第三者による商品形態選択の自由との関係を考慮するならば,安易に商品形態を立体商標として商標登録させることはできないという考えが働くのです。

そもそも,商品形態は,その商品が果たすべき役割によって基本的な形態が決定づけられるという性格があり,商品によっては,そのような側面が色濃く現れるという場合もあります。

そのような商品を立体商標として登録を認めると,商品形態を保護するという名目で,特定の者に,その商品の機能を独占させるという結果を招くことになります。

ですから,商品形態を立体商標として登録することを認めるかについては,慎重な検討が求められるところなのです。

裁判所や特許庁においては,基本的に,「商品の立体的形状は,本来,その機能を効果的に発揮させる,あるいは優れた美感を看者に与える,との目的で選択されるものであって,商品の出所を表示し,自他商品を識別する標識として選択されるものではなく,これに接する需要者も,そのように理解し,商品の出所を表示するために選択されたものであるとは理解しないのが一般的であるというべきであるから,商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合を除き,基本的に自他商品の識別標識とはならない」,あるいは「指定商品に係る商品等の形状として,その商品等の機能をより効果的に発揮させたり,美感をより優れたものにする等の目的で同種の商品等が一般的に採用し得る範囲内のものについては,商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として登録を受けることはできない」と考えられています。cont_img_67.jpg

そして,市場において,長期間にわたり,繰り返し販売されることによって識別性を獲得したものについては,商品の機能を果たすために不可欠な形態でない限りにおいて,登録が認められています。

裁判所においては,識別性獲得の評価が非常に厳格に行われていた時代がありました。 そのような裁判所の運用によって,あの有名な「サントリーの角瓶」や「ヤクルトの容器」,イタリア有名ブランドのフェラガモのシンボルマークですら,二次元で表現されたものについては商標登録が認められていたにもかかわらず,立体商標として登録が認められませんでした。

裁判例によって,「商品の形状そのものからなる立体商標は,原則として,取引に際し必要適切な表示として特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としない」と判示するものあり,事実上,商品形態の立体商標としての登録を拒否していました。

また,現実に流通しているものと登録を求めるものと同一性を厳密に解釈し,例えば,サントリーの角瓶であれば,流通しているものにはラベルが付いているが,登録を求めているものにはラベルが付されていないとの理由で,登録を求めているものは,長年市場において流通しておらず識別性を獲得していないと判断されていました。

ところが,このような裁判所に運用は,知財高裁が設けられた後,大きく変化します。 マグライト(懐中電灯)について立体商標としての登録を認めるべきかについて判断された知財高裁平成19年6月27日判決は,明らかに従前よりも緩和した条件で識別性の獲得を認め,コカ・コーラのボトルについて問題となった知財高裁平成20年5月29日判決がこれに続きます。 また,これらの判決は,市場で流通しているものはラベルが付されているが,登録出願したものにはラベルが付されていない場合であっても両者の同一性を認め,市場において長らく受け入れられているとも判断しました。

なお,「ヤクルトの容器」は,再び,立体商標登録出願を行い,特許庁の審査,審判において登録が認められませんでしたが,知財高裁が特許庁の審判を取消し,現在では立体商標として登録が認められています。

このような知財高裁の判決を受けて,特許庁においても,以前と比較すると商品形態が立体商標として登録される例が増えるようになりました。

商品形態を立体商標として登録する際に求められる識別性のハードルは,不正競争防止法の周知性や混同の要件と比較すると非常に高いものであることは,現在においても変わりなく,商標登録の道は,市場において多くの需要者に長年受け入れられている商品にしか開かれていないといえますが,仮に,そのような商品であるならば立体商標として登録することを検討すべきであると思います。

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