弁護士視点で知財ニュース解説

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ビッグデータ保護に向けた法改正

cont_img_46.jpgビッグデータ保護に向けて不正競争防止法の大きな改正が行われることになりました。
以前より,不正競争防止法では営業秘密に関する不正競争行為が規定されており,営業秘密が保護されてきました。

しかし,営業秘密は,秘密として管理されている必要があり,この秘密管理性の要件がネックとなり営業秘密と認めてもらえないという事例が多くありました。

そして,営業秘密の秘密管理性の要件が有用なビッグデータの活用を阻害しているとの指摘があり,今回の法改正に向けた動きになっています。

まず,営業秘密とは別に「限定提供データ」という定義が設けられました。

「限定提供データ」とは,「業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(電子的方法,磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法)により相当量蓄積され,及び管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く)」をと定義されています(不正競争防止法2条7項)。

なお,7項の新設により,現行の7項から10項までは8項から11項に繰り下げとなっています。

そして,「限定提供データ」に関する不正競争行為として,以下のものが定めらています(不正競争防止法2条1項11号?16号)。

なお,これらの規定が新設されたことにより,現行の11号から16号までは17号から22号に繰り下げとなっています。

  1. 窃取,詐取,脅迫その他の不正の手段により限定提供データを取得する行為(以下「限定提供データ不正取得行為」という。)又は限定提供データ不正取得行為により取得した限定提供データを使用し,若しくは開示する行為(11号)
  2. その限定提供データについて限定提供データ不正取得行為が介在したことを知って限定提要データを取得し,又はその取得した限定提供データを使用し,若しくは開示する行為(12号)
  3. その取得した後にその限定提供データについて限定提供データ不正取得行為が介在したことを知ってその取得した限定提供データを開示する行為(13号)
  4. 限定提供データを保有する事業者(以下「限定提供データ保有者」という。)からその限定提供データを示された場合において,不正の利益を得る目的で,又はその限定提供データ保有者に損害を加える目的で,その限定提供データを使用する行為(その限定提供データの管理に係る任務に違反して行うものに限る。)又は開示する行為(14号)
  5. その限定提供データについて限定提供データ不正開示行為(前号の場合において前号の目的でその限定提供データを開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその限定提供データについて限定提供データ不正開示行為が介在したことを知って限定提供データを取得し,又はその取得した限定提供データを使用し,若しくは開示する行為(15号)
  6. その取得した後にその限定提供データについて限定提供データ不正開示行為があったこと又はその限定提供データについて限定提供データ不正開示行為が介したことを知ってその取得した限定提供データを開示する行為(16号)

上記の規定を一見すると非常に理解することが困難だと思います。

「限定提供データ」に関する不正競争行為は,実は,営業秘密に関する不正競争行為とパラレルになっています。

以下の図を見てください。
これは,営業秘密に関する不正競争行為を整理した図です。

なお,図中の囲み数字は,2条1項の号数を示しています。

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営業秘密に関する不正競争行為と「限定提供データ」に関する不正競争の対応関係を整理すると以下のとおりです。

  • 営業秘密4号・・・・限定提供データ11号
  • 営業秘密5号・・・・限定提供データ12号
  • 営業秘密6号・・・・限定提供データ13号
  • 営業秘密7号・・・・限定提供データ14号
  • 営業秘密8号・・・・限定提供データ15号
  • 営業秘密9号・・・・限定提供データ16号

営業秘密,限定提供データのいずれの行為も不正取得型と正当取得型に大きく分かれます。

不正取得の場合は取得行為,使用行為,開示行為の全てが不正競争行為にあたります。

他方,正当取得の場合は,自らの利益を図る目的,情報保有者を害する目的で使用,開示した場合が不正競争行為にあたります。

営業秘密の場合は,不正取得した情報,不正開示した情報であることを知って,又は重大な過失により知らないで取得する行為,使用する行為,開示する行為が不正競争行為になり,限定提供データの場合には悪意の場合に限定されています。

また,営業秘密の場合には,悪意,重大な過失になった時点以降に,使用する行為,開示する行為が不正競争行為になり,限定提供データの場合には悪意の場合に限定されています。

秘密管理性の要件がネックとなり営業秘密と認められることがない一定量のデータが限定提供データとして保護されるようになった代わりに,営業秘密では善意重過失の場合にも不正競争行為にあたるとされているものを,限定提供データでは悪意の場合にのみ不正競争行為にあたるとすることでバランスをとっているのです。

上図を参考に,ビッグデータの保護に関する不正競争行為を理解するとともに,改めて営業秘密に関する規定も整理してみてください。

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