ブランド品などのコピー商品を販売する行為が違法であるということは十分に周知されており,多くの方が,ご存知のことだと思います。
では,なぜ,ブランド品を販売する行為が違法であるか。
それは,ブランド品のロゴなどは商標登録されており,商標法では,商標が付された商品を輸入,展示,販売する行為などが商標の使用にあたると規定されており,商標権者の許可なく商標を使用した場合には商標権侵害になるからです。
そして,コピー商品であることを知った上で輸入や販売をすると,商標権者に対して損害賠償を行わなければならない上に,10年以下の懲役,1000万円以下の罰金,その両方の刑罰が科されます。
コピー商品が氾濫していることもあり,コピー商品の販売を安易にされる方がいますが,それに対する制裁は,意外に重い内容となっています。
それでは,自分で使用することを目的に,コピー商品を購入する行為は法律的にどのようになるのでしょうか。
最近では,実店舗でのコピー商品の販売は少なくなってきたように思いますが,インターネット上では多くのコピー商品が販売されています。
そして,インターネットでコピー商品を販売しているサイトを確認すると,違和感のある日本が使用されているなど,明らかに海外で立ち上げたサイトであると思われるものも少なくありません。
海外のサイトで販売され,商品が海外から送られてくる場合には,コピー商品を輸入していることになります。
そして,海外からコピー商品を輸入した場合には商標法だけではなく,関税法との関係でも問題になります。
それでは,自分で使用する目的でコピー商品を海外から輸入する行為は商標法や関税法に違反することになるのでしょうか。
この問題を理解するには,商標法では,何が「商標」であると規定されているのかということを知っておかなければなりません。
商標法では,業として商品を生産し,証明し,又は譲渡する者が,商品について使用をするものを「商標」というと規定されています。
つまり,商標登録されたロゴなどが商品に付されている場合,「業」として使用する者のもとでは「商標」となるのですが,「業」として使用しない者,例えば,自分で使用することを目的としている者のもとでは「商標」ではないということです。
現在の商標法では,商標登録されたロゴなどが商品に付されていたとしても,「人の属性」によって商標であったり,商標でなくなったりするという,一般の方には理解しにくい規定の仕方になっているのです。
ですから,コピー商品であると知って海外からコピー商品を輸入した場合,輸入の目的が自分で使用する目的であった場合には,コピー商品に付されたロゴは「商標」ではなく,「商標」でない以上,輸入する行為が商標権を侵害することもありません。
つまり,商標法との関係では,自分で使用する目的でコピー商品を輸入しても問題ないということになるのです。
それでは,関税法との関係では,どうでしょうか。
関税法では,「商標権を侵害する物品」を輸入してはならないと規定され,これに違反した場合にも10年以下の懲役,もしくは1000万円以下の罰金を課されることになります。
関税法でも「商標権を侵害する」ということが前提になっており,先ほど説明したように,自分で使用する場合には,その人のもとではコピー商品に付されたロゴなどは「商標」ではありませんので,関税法との関係でも問題はありません。
海外のサイトからコピー商品を購入して輸入する場合に限らず,海外の実店舗で購入し,自分で日本に持ち込む場合も同様です。
この記事を見られた方の中で,「自分で使用する目的だ!」と主張すれば,いくらでもコピー商品を日本に持ち込むことができると早合点される方がおられるかもしれません。
何度もコピー商品を輸入している場合には,当局から「業として」行っていると評価される可能性がありますし,同じ商品を多数輸入した場合にも自信で使用する目的であるという主張が受け入れられないと考えておいた方がよいと思います。
「海外のサイトでコピー商品と知って購入したら,税関から,認定手続開始通知書が届きました。どうすればよいですか。」という質問を受けることがあります。
税関は,関税法に基づいて,「商標権を侵害する物品」ではないかと判断した場合には,本当に商標権を侵害するものであるかどうかを判断する認定手続を行います。
税関から送られてくる通知書というのは,この手続が開始されたことを知らせる通知です。
この認定手続開始通知書には,「コピー商品は,輸入・返送が出来ません。権利者により侵害品であるという鑑定結果が出ますと没収後廃棄処分されます。結果は封書でお知らせします。」と記載されていますが,認定手続開始通知書に記載されている「コピー商品は,」という表現は,実は正確な表現ではありません。
関税法との関係で厳密に表現するならば「商標権を侵害する物品は,」です。
そして,先ほど説明したようにコピー商品に付されたロゴなどが「商標」であるか否かは,それを使用する人の属性で決定されますので,「商標権を侵害する物品」であるか否かも,それを使用する人の属性で決定されます。
本当に自分で使用する目的の方であれば,輸入を行うことができるのです。
ただし,輸入した方が,本当に自身で使用する目的であるかどうかを,税関が判断する必要があり,その判断に30日程度の期間が必要になります。
その間,輸入しようとする商品を倉庫業者に預けておく必要があり,その費用は輸入しようとする者が負担しなければなりません。
この結果,認定手続開始通知書を受け取った多くの方が,輸入しようとする商品を放棄しているのではないでしょうか。
なお,2021年5月21日に公布された改正商標法(公布から1年6月以内に施行)により,輸入する側が個人使用目的の輸入であっても,海外の事業者が,日本人を使用して日本にコピー商品を輸入させる行為が商標権侵害となり,関税法の規制の対象となりました。
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