マツダは,平成27年3月25日,「ライセンス・オン・トランスファー(LOT)ネットワーク」に加盟すると発表しました。
LOTネットワークとは,平成26年7月,パテント・トロール訴訟を削減し,パテント・プライバティアリングを抑制することを目的として,キヤノン,Google,Dropbox等の6社によって設立されたコンソーシアムです。
設立当初のLOTネットワークに加盟6社の特許件数は約30万件,売上総額は1,170億米ドル(約14兆円)以上に及んでいます。
LOTネットワークに加盟すると,加盟会社が特許を保有する限り特許権に何らの制限も加わりませんが,加盟会社がLOTネットワークに加盟していない会社に特許権を譲渡した場合,譲渡された特許権については加盟会社に対して無償の実施権が付与される仕組みになっており,パテント・トロールが加盟会社から特許権を取得したとしても,加盟会社に対しては特許権を行使することができないことになります。
米国では,平成25年には過去最高の6,000件以上の特許訴訟が提起され,そのほとんどがパテント・トロールと呼ばれる,特許ライセンスの供与と特許訴訟提起を生業とする組織によるものであったと報告されています。
そして,パテント・トロールが保有する特許の7割以上は,事業会社から取得したもので,パテント・トロールは,侵害警告や訴訟によって得られた収益の一定程度を譲渡会社に還元することを約束して,特許権を取得する場合もあると言われています。
米国では,パテントトロールによる特許権行使が実業界に与える影響を無視することができない状況にあり,専ら権利行使を目的として取得した特許権の行使を制限すべきあるという議論が起きているほどです。
このようなパテント・トロールによる被害は日本企業にも及んでおり,日本でも同様の議論が行われているところです。
今回,LOTネットワークに加盟することを表明したマツダも,同社の発表によると昨年8件の侵害警告等を受けていたようで,将来のリスクを回避する目的で加盟に至ったようです。
自動車業界ではフォードに次ぐ二社目で,今後も加盟企業は増加するのではないかと思われます。