エイベックスは,子会社のエイベックス・ミュージック・パブリッシングを介し,JASRACとの楽曲著作権の管理委託契約を見直し,系列会社であるイーライセンスに楽曲の委託を依頼する方針を打出しました。
JASRACは,300万曲以上の楽曲を管理しており,放送事業者との間で包括契約を締結しており,放送事業者がJASURACに対して放送事業収入の1.5%を支払うことによってJASRACが管理する300万曲以上の楽曲を使い放題する契約を締結していました。
このようなJASRACによる楽曲使用料の徴収方法を包括徴収方式と呼ばれています。
平成13年に著作権等管理事業法が制定されたことにより,法制度上はJASRACによる市場独占は解消されましたが,JASRACの包括契約の存在が,事実上新規事業者の市場参入の大きな障壁となっていました。
イーライセンスは,公正取引委員会に対して,JASRACによる包括徴収方式が独占禁止法に違反するとして排除処置を求め,平成21年には排除措置命令が下されました。ところが,JASRACが不服として申立てた審判手続においては,平成24年6月に排除措置命令を取消す審決が下されました。
そこで,イーライセンスは,東京高裁に対して公正取引委員会の審決を取消す裁判を提起したところ,東京高裁は,平成25年11月,放送局がイーライセンス管理曲の利用を回避する旨の内部文書が存在したことなどを根拠に,審決を取消し再度公正取引委員会において審理を行うことを命じる判決を下しました。
なお,JASRACは,東京高裁の判決を不服として最高裁に上告しましたが,最高裁においても平成27年4月に東京高裁の判断を支持する判決が下されています。
JASRAC,イーライセンス,ジャパン・ライツ・クリアランスと放送事業者は,平成27年2月以降,楽曲管理事業者三社の管理する楽曲の利用シェアーを加味した新しい徴収方式の導入を検討する協議が開始されています。
今回のエイベックスの方針転換は,三社による協議内容とは質的に異なるもので,JASRACによる一極体制が大きく後退することになると予想されています。
また,イーライセンスとジャパン・ライツ・クリアランスは,経営統合に向けた協議を行っており,二社が経営統合されると二極体制が確立されることになります。
JASRAC管理楽曲の使用料は,現在,放送事業者については放送事業収入の1.5%,CDの利用の場合には本体価格の6%と定められています。
他方,イーライセンスは,CDの利用を本体価格の5%と定めており,ジャパン・ライツ・クリアランスとの経営統合が実現した後,JASRACがCD利用の利用料を引き下げざるを得ない状況に至る可能性があります。
また,先の三社協議が成立し,放送での利用シェアーに応じた放送事業者からの使用料の受取りが実現された場合,JASRACの放送事業者からの収益も低下することになります。
楽曲の管理事業をとりまく動きは,まさしく東京高裁の判決が契機になっており,判決がが意図した動きがまさに起ころうとしていると評価することができるのではないでしょうか。