弁護士視点で知財ニュース解説

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JASRAC 課金方法改める

日本音楽著作権協会(JASRAC)は,平成27年5月8日,放送分野における著作権使用料の徴収方法につき,NHK,民放連との間で新たな算定方式を導入することを盛り込んだ協定を結んだと発表しました。

新たな算定方式では,従前同様に,各放送局に対するJASRAC管理楽曲の包括使用許諾を行い,楽曲使用料についても包括的に徴収する「包括許諾・包括徴収」を維持しつつ,新たに各放送局が年間に使用した楽曲のうちJASRAC管理楽曲が占める比率を算出し,各放送局の売上高の一定比率としていた従来の算定式に,新たにJASRAC管理楽曲の比率も掛け合わせて算出するという方法を採用することになります。なお,JASRAC管理楽曲比率の算出方法などは,NHK・民放連と音楽著作権管理事業者3法人による「5者協議」で今後詰めるようです。

今回のJASRACによる課金システムの変更は,平成27年4月28日に,最高裁がJASRACと放送局等が締結している「包括徴収方式」につき,独占禁止法が禁止する「私的独占」に該当するおそれがあると判断し,公正取引委員会における審判手続のやり直しを命じた判決を受けたものです。

従前のジャスラックの課金方法は,管理曲の利用数を問わず年間で放送事業収入の1.5%を使用料として支払うと定められていることから,JASRAC管理楽曲以外の楽曲を使用しようとすると,JASRACに対して支払う放送事業収入の1.5%に加えて楽曲使用料が発生するため,放送局等は,JASRAC以外の団体が管理している楽曲の使用を回避しようとするところに不当に競争を排除する効果があり,最高裁において問題があると指摘されました。

JASRACは,再度行われる公正取引委員会による審判手続において,新興事業者の排除に当たらないことなどを改めて主張する見通しですが,一方で,審判手続とは別に他の楽曲管理会社に対する譲歩を行っていくことにより将来のリスク回避を行っておく手立てを講じたものと思われます。

楽曲の使用を予定する者が使用に先立って個別に使用許諾を得るということになるとテレビ番組等の制作に著しい不都合が生じますので,「包括許諾・包括徴収」方式そのものについては合理性があり,独禁法との関係において問題はないものと考えています。

しかし,JASRAと他社との使用比率を前提とした許諾料算出方法を採用していないことに問題があり,JASRACがこのことを認識し改めたことになります。

再度行われる審判手続においては,最高裁の判断が尊重されることになると思われますので,今回のJASRACの判断は適切だったのではないかと考えています。

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