弁護士視点で知財ニュース解説

iPod 訴訟について

知財高裁は,平成26年4月24日,原審東京地裁の判決と同様に,Apple Japan合同会社に対して,株式会社齋藤繁建築研究所に約3億3600万円の支払いを命じる判決を下しました。

なお,知財高裁の判決に対しては,Apple Japan,齋藤繁建築研究所ともに上告を行ったようですが,本件は,どのような訴訟であるのか東京地裁の判決(平成25年9月26日判決・平成19年(ワ)第2525号,平成19年(ワ)第6312号事件)に基づいて概観しみましょう。

まず,本件は,Apple Japan側から,「iPod(第5世代)」,「iPod nano(第2世代),同(第3世代),同(第4世代)」,「iPod classic」の各製品に用いられている「クイックホイール」と呼ばれるリング状のボタンの技術の実施が,齋藤繁建築研究所が有する特許第3852854号特許権を侵害しないことの確認を求める訴訟が提起され,齋藤繁建築研究所は,当該訴訟において,上記技術が上記特許権を侵害するとして損害金約627億円の内100億円の支払いを求めた事件です。

齋藤繁建築研究所の特許権(特許第3852854号)は,発明の名称を「接触操作型入力装置およびその電子部品」とするもので,特許請求項の内容は以下のとおりです。

【請求項1】

指先でなぞるように操作されるための所定の幅を有する連続したリング状に予め特定された軌跡上に連続してタッチ位置検出センサーが配置され,

前記軌跡に沿って移動する接触点を一次元座標上の位置データとして検出するタッチ位置検知手段と,接点のオンまたはオフを行うプッシュスイッチ手段とを有し,

前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される前記軌跡に沿って,前記プッシュスイッチ手段の接点が,前記連続して配置されるタッチ位置検出センサーとは別個に配置されているとともに,
前記接点のオンまたはオフの状態が,前記タッチ位置検出センサーが検知しうる接触圧力よりも大きな力で保持されており,かつ,前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される前記軌跡上における前記タッチ位置検出センサーに対する接触圧力よりも大きな接触圧力での押下により,前記プッシュスイッチ手段の接点のオンまたはオフが行われることを特徴とする接触操作型入力装置。

【請求項2】

請求項1記載の接触操作型入力装置であって,前記プッシュスイッチ手段が4つであることを特徴とする接触操作型入力装置。

【請求項3】

請求項1または請求項2記載の接触操作型入力装置を用いた小型

なお,齋藤繁建築研究所は,本件訴訟提起と並行して申立てられた無効審判の手続において,訂正請求を行っています。

東京地裁は,Apple Japanの「iPad」各製品が,特許第3852854号の「指先でなぞるように操作されるための所定の幅を有する連続したリング状に予め特定された軌跡上にタッチ位置検出センサーが配置されたタッチ位置検知手段」,「『連続して』タッチ位置検出センサーが配置されている」,「前記軌跡に沿って移動する接触点を一次元座標上の位置データとして検出する」,「前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される前記軌跡に沿って,前記プッシュスイッチ手段の接点が,前記連続して配置されるタッチ位置検出センサーとは別個に配置されている」,「前記接点のオンまたはオフの状態が,前記タッチ位置検出センサーが検知しうる接触圧力よりも大きな力で保持されて」,「前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される前記軌跡上における前記タッチ位置検出センサーに対する接触圧力よりも大きな接触圧力での押下により,前記プッシュスイッチ手段の接点のオンまたはオフが行われる」の各要件を充たしている判断した上で,「iPad」各製品のプッシュスイッチ手段であるボタンは4つあり, クリックホイールという接触操作型入力装置を用いた小型携帯装置である点については当事者に争いがないことを前提に,「iPad」各製品は,本件各発明の構成要件を全て充足すると判示しました。

本件では,Apple Japan側から特許無効の抗弁(特許法104条の3)の主張が行われており,かかる主張に対して東京地裁において判断が行われています。

Apple Japanが主張した特許第3852854号の無効理由は10個あり,5個については齋藤繁建築研究所が行った訂正請求に新規事項の追加あるいは特許請求の範囲の拡張にあたる(特許法134条の2)ことを理由とするものであり,5個については進歩性(特許法29条2項)の不存在を理由とするものです。

東京地裁は,齋藤繁建築研究所が行った訂正請求については,いずれも明細書及び添付図面において記載された範囲で行われている,特許請求の範囲の減縮にあたることを理由にApple Japanの主張を退けました。

また,進歩性の欠如につきましても,Apple Japanが提出した公知技術を前提とした場合に進歩性の欠如が認められませんでした。

この結果,東京地裁は,Apple Japanに対し,約3億3600万円の支払いを命じたわけです。

本件は,Apple Japanから主張された特許無効原因が10個もあるため非常に長い判決書となっていますが,訴訟構造については特許侵害訴訟の典型的なものといえるので,特許侵害訴訟を概観する上では参考になる判決ではないかと思われます。

なお,冒頭にも説明しましたが,本件は,Apple Japan,齋藤繁建築研究所とも上告の申立てを行っておりますので,最高裁の判断を注視しておく必要があると思います。

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