あらゆるモノがインターネットに接続される(IoT:Internet of Things)ことで,デバイスを使用する過程で様々な情報を収集することが可能となり,これまでは取得できなかった情報が取得することができるようになりました。
そして,多くのデバイスを介して収取された膨大な情報が蓄積されてビッグデータとなり,AIを用いてビッグデータを解析することにより,新たな提案を行うことができるようになっています。
「情報の収取→情報の蓄積→情報の解析→処理」によって情報が新たな価値を創出する,情報による価値創出です。
IoTやAIがもたらしてくれる価値は,単純に「情報の収取→情報の蓄積→情報の解析→処理」による価値創出だけでなく,処理結果(提案)に基づくビジネスを検証することで新たな情報収取や情報解析に活用することができます。
このような情報収取から処理,さらに情報収取へと流れる過程を,ここでは「価値創出サイクル」と呼ぶこととします。
あらゆるデバイスがインターネットに接続される以前,デバイスは個々に独立して存在する商品で,独立して存在する商品としての価値をもっていました。
そして,デザイナーは,独立して存在する商品を対象にデザインしておればよく,また,デザイナーがユーザーの事情を忖度し,デザイナーの発想で商品をデザインしていました。
ユーザーは,提供された商品を選択するか否かを決定すればよく,多くのユーザーの賛同を得られたものが「ヒット商品」となりました。
ユーザーは,単に,提供された商品を選択するだけの存在に過ぎなかったといえます。
ところが,あらゆるモノがインターネットに接続され,商品が価値創出サイクルの中に位置づけられることにより,商品が独立した個々の存在ではなく,価値創出サイクルの中の端末としての側面が強くなり,デバイスそのものの存在価値は相対的に低下することになります。
デバイスの存在価値低下にともない,デバイスそのものに対するデザインを行うことの価値も相対的に低下し,デザイナーは,価値創出サイクルの端末にあたるデバイスだけをデザインしていると,デザイナーとしての存在価値も低下することになります。
そこで,デザイナーは,価値創出サイクルの端末にあたるデバイスのみをデザインするのではなく,価値創出サイクルそのものデザイン,その一環としてのデバイスのデザインを行うようになってきています。
また,デザイナーは,デバイスから収取される情報を参考に,いわばユーザーと対話をしながらデザインを行っていくことになります。
これが,デザインが,UI(User interface)からUX (User Experience)へ,モノからコトへと言われるように言われているものの実態であると思います。
このように,デザインは,専ら端末であるデバイスの形態を対象とするものではなく,価値創出サイクルを対象とするものに変化しているのです。