弁護士視点で知財ニュース解説

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IoT時代の商品デザイン(3)

cont_img_27.jpg現在の法律と価値創出サイクルとの関係をみると,総指揮者として価値創出サイクルを創出するデザイナー(ビジネスアーキテクチャーでありUXデザイナー。以下では,便宜上「UXデザイナー」と呼びます。)の知的創作の成果をカバーしている法律がありません。

「情報の収取→情報の蓄積→情報の解析→処理→検証→新たな情報の収集」という一連のシステムに新規性,進歩性が認められた場合には,価値創出サイクルの一連のシステムを特許発明として出願し,特許法による保護を受けることができます。

しかし,UXデザイナーが志向しているのは,新しく,進歩性が認められるような一連のシステムを創作することではありません。

UXデザイナーの志向というのは,既存のシステム,既存のものとは異なるが進歩したとまでは言えない一連のシステムを用いて,ユーザーの活動をかたちづくること,そして,ユーザーの活動をシンプルなものにするとともに,ユーザーに多くの可能性を提供することに向いています。

ですから,一連のシステムを特許法により保護することは,UXデザイナーの保護が創出したものを保護することになっていないことが多いと思います。

ネットワークの技術,メモリに関する技術,プロセッサーの技術は大手の独擅場の技術であるため除外するとして,センサーの技術,情報解析処理のアルゴリズムについては,UXデザイナーが関与することができる領域でありえます。

そして,UXデザイナーが,これらの分野で,解決すべき課題や発明の着想を提供することがあるかもしれません。

しかし,裁判所では,「発明者とは,自然法則を利用した高度な技術的思想の創作に関与した者,すなわち,当該技術的思想を当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構成する創作活動に関与した者を指すというべきである。」とされ,解決すべき課題や発明の着想を提供しただけでは発明者とは言えないと判断されていますので,UXデザイナーが特許法により保護されるというのは非常に限られた場合であると言わざるを得ません。

ところで,プログラムについては,著作権法による保護を受けることができますが,著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されていることから,「表現したもの」の前提にプログラムによって実現する目的を提供しただけの者は,当然に,現実に創作されたプログラムの背景にあるアイデアを提供しただけの者も著作者として保護されません。

UXデザイナーのうちで,価値創出サイクルを構成するプログラムを現実に創り上げる過程を協働する方はほとんどいないのではないでしょうか。

従来から商品デザインに関与されていた方であれば,価値創出サイクルを創作するにあたり,端末の形態やインターフェースの創作に関与することがあり,その部分に限り,意匠法や不正競争防止法による保護を受けることができます。
しかし,価値創出サイクルの創作において,端末の形態の創作は,全体の創作活動からすれば,文字通り端末の一部のものに過ぎず,このような保護は,UXデザイナーの知的創作の成果を十分に保護しているとは言えないのではないでしょうか。

これまで見てきたとおり,現在の法律は,UXデザイナーの知的創作の成果を保護するには十分ではないと理解してもらえると思います。

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