米アップルがフィリピンで製造・販売されているスマートフォン「my/phone」がアップル社の「iPhone」の商標権を侵害しているとしてフィリピンの知的財産局(IPO)に訴えていた事案でIPOは,「iPhone」 と「my/phone」 の商標は非類似であると判断したと報道されています。
両商標を構成する「Phone(phone)」は電話を意味する言葉であり,スマートフォーンの商標としては商品の内容を説明する部分であるため類否判断に強い影響を及ぶすことはなく,商標の類否判断において重要となるのは「i」と「my」の部分です。
ところで,商標の類否判断は,呼称,概念,外観の三つの要素を総合的に判断することになりますが,今回の商標のように普通文字で構成された商標においては呼称と概念が重要になります。
まず,呼称については「アイ」と「マイ」の差があるものの,日本の特許庁では呼称が類似すると判断された例が多く存在します。
また,概念についてみると「i」はインターネットの頭文字である「?」の意味がありますが,一人称主格の「I」の意味もあり,一人称所有格の「my」と類似するといえます。
ただし,商標の類否判断においては,単なる商標の比較ではなく取引の実情を考慮した上で判断するというのが最高裁の考え方です。
日本でもNTTドコモが使用する「e-sight」というサービス表示が第三者が有していた「e-sight」という商標権を侵害するかが問題となった裁判において,NTTドコモの圧倒的な知名度により混同が生じないという理由で商標権を侵害しないという判断が下されたことがあります。
フィリピンの「my phone」は,地場のスマートフォーンとして国内5位のシェアーを有しており,アップル社とは異なるハート型のロゴ(色彩も銀,赤,青,黄が施されたもの)を使用しており,ロゴと一体であれば混同を生じすることはないといえなくもありません。
しかし,商標は,視覚的に存在するばかりでなく言葉により表現する場合も少なくないこと,両社の表示が同一の商品に使用されていることを考慮すれば,日本の基準でいうならば,「my/phone」は「iPhone」の商標権を侵害すると判断されると思います。
フィリピンの手続では,通知を受取った後30日以内に再び審理を求めることができますので,アップル社の動向が注目されるところです。