弁護士視点で知財ニュース解説

弁護士視点で知財ニュース解説

3Dプリンターと知的財産

3Dプリンターと聞いてどのようなニュースを思い浮かべるでしょうか。

最近,3Dプリンターは,両極端なニュースで話題になっています。
ひとつは,3Dプリンターが再生医療に用いられているというニュースです。
もうひとつは,3Dプリンターで製造した殺傷能力のある拳銃を所持していた男性が逮捕されたというニュースです。

再生医療の発展は,非常に喜ばしいことではありますが,3Dプリンターが悪用されるリスクは否定できません。
現在,3Dプリンター自体を法律で規制する必要があるのかという議論がなされているところです。

s039.jpgその中で,先日,銃器などの危険物や著作権侵害の恐れがある模倣品を3Dプリンターで製造することを防ぐため,違法性や著作権侵害の恐れがある場合には,指示を受け付けないセキュリティプログラムが開発されたと発表されました。
このプログラムは,法的認可や許諾が必要な製品(ブラックリスト対象製品)かどうかを高速で判定し,3Dプリンターが違法に使用されることを防止するものだそうです。

銃刀法により規制されている銃や刀であれば,容易に違法であると判断できそうですが,知的財産権を侵害するかどうかを正確に判定するプログラムを組むことは非常に難しいと思います。仮に,このようなプログラムの導入を法律で義務づけられてしまうと知的財産権を侵害しない製品の製造も規制されることになりかねず,表現の自由に対する重大な制約となってしまう可能性が認められます。

知的財産権を侵害するかの判断が困難であることを説明する前提として,3Dプリンターと知的財産の関係を簡単に整理してみます。

3Dプリンターで立体を製造した場合,その立体が著作権であれば,著作権者の同意がないかぎり,製造が原則として複製権侵害,又は,翻案権侵害となります。もちろん,私的な複製,翻案であれば著作権侵害となりませんが,私的な目的で複製,翻案を行ったとしても,その後に第三者に公開等を行ってしまうと著作権侵害となります。

また,当該立体に商標権が認められている場合,当該立体を当該商標と同一の指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務に使用する目的で当該立体の製造を行えば商標権侵害となります。

さらに,当該立体に意匠権が認められている場合には,当該立体及びこれに類似する立体の製造,使用,譲渡等を業として行えば,原則として意匠権侵害となります。

以上のとおり,3Dプリンターによる立体の製造は知的財産権を侵害する危険性を有するものですが,知的財産権を侵害するかどうかは,単純に当該立体の製造という行為のみから判断できるものではありません。
また,著作権については,権利登録が不要であるため,権利の保護期間を把握することが困難であり,権利が失効しているかについて正確なデータをプログラムに組み込むことは極めて困難であると考えられます。

このようなことから,知的財産権を侵害しない態様での3Dプリンターの使用が規制されてしまう可能性が認められるため,3Dプリンターの規制については慎重に判断されるべきではないでしょうか。

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