弁護士視点で知財ニュース解説

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Cabosを用いた音楽の著作権侵害

JASRACの発表によると,ファイル共有ソフト「Cabos」を使用してインターネット上に音楽ファイルなどを公開していた女性と,これを幇助していた男性が高松地方検察庁に送致されたようです。

この女性は,Cabosを使用してJASRACの管理楽曲を含む音楽ファイルを無断でインターネット上に公開,不特定多数のユーザに対して送信できるようにしていたようで,男性の方は,この女性にCabosをインストールしたパソコンを販売して操作方法を教えていたようです。

音楽の著作権には,公衆送信可能化権という権利があります。
公衆送信可能化権がある関係で,現実に音楽のデータを送信していなくても,サーバー上で著作物のデータをいつでも送信することができる状態に置いただけ著作権侵害ということになり,それを手伝うと著作権侵害の幇助ということになります。

Cabos は LimeWire と Acquisition を元にして作られた Gnutella ファイル共有プログラムで,フリーソフトウェアで,シンプルなサイドバー・インターフェース,Mojito DHT UPnP,IP2Country にも対応しており,iTunes との連携もしています。
この結果,Cabos そのものがネット上での音楽著作権侵害を誘引する性格を有するソフトであると言えます。

では,Cabos のようなファイル共有ソフトを制作する行為は問題とはならないのでしょうか。
Winny 事件において大阪高裁は,インターネット上におけるソフトの提供の幇助犯は,これまでにない新しい類型であり,罪刑法定主義からも慎重な検討を要するとし,「価値中立のソフトをインターネット上で提供することが,幇助犯となるには,ソフトを違法行為の用途のみに又はこれを主要な用途とした場合に成立する」とし,被告人は,著作権を侵害する者が出る可能性・蓋然性があることを認識し,認容していたことは認められるが,それ以上に,ソフトを違法行為の用途のみに又はこれを主要な用途として使用させるように勧めて提供したとは認められないから,幇助犯は成立しないと判断しています。

著作権侵害に利用される可能性が非常に高いとしても,専ら著作権侵害のためだけに使用するものでない限り,法的にみて技術は中立的であるとの考えを前提に,その技術を作りだしたものが著作権侵害を唆すような言動を行っていない限り幇助とはならないと判断されているのです。

これを前提にCabosについて考えると,このソフトそのものは著作権侵害の目的で制作されたものではありませんし,開発者が音楽の著作権を侵害することを唆すようなことも行っていません。
ですから,Cabos の制作自体は,法的には問題にはなりません。

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