弁護士視点で知財ニュース解説

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AIと知的財産権

cont_img_46.jpgAIは artificial intelligence の略語で,日本では「人工知能」と訳されています。

最近では,AIが小説を書いた,絵を描いた,作曲を行ったというニュースを耳にするようになり,人工知能という言葉を耳にすると,コンピューターによって,人が行っていた知的活動を何でもやってしまうと連想される方も少なくないと思います。

最近,雑誌などでも「AIによって無くなる仕事」といった類の記事を目にすることがあり,「自分の仕事がAIにとって代わられる」という危機感をもっておられる方も少ないでしょう。

ひと昔前には,ロボット技術の発展により人から肉体労働,単純労働が奪われていくということが言われたものですが,現在では,AIが人の知的活動まで奪っていくと言われるようになりました。

一言で,「AI」といっても様々な分野のものがあり,まさしく「人の脳」に代わるべきものの開発というものも昔から行われているところです。

しかし,最近話題になっているAIは,機械学習,特に深層学習(多層のニューラルネットワークによる機械学習手法)と呼ばれる分野です。

コンピューターの計算能力の飛躍的発展,インターネットの発達により学習の対象になる膨大な情報を容易に入手することができるようになったことから,深層学習の精度が高まって,実用性がともなってきたことにより社会的な注目が一気に集まっている状況にあります。

コンピューターによる深層学習においては,AIの技術もさることならが学習の対象となるビッグデータが重要な知的財産となります。

オープン技術を標準化する世界的団体であるクロノスグループが,ニューラルネットワークの標準化を行う意向を示し,2018年中旬には正式版をリリースすると発表しており,近くAIの技術が一般化されることになると思われますので,AIの技術そのものよりも,機械学習の対象となるビッグデータや,ビッグデータを有意に加工された情報の保護と活用が大変注目されるようになってきています。

最近,新聞やテレビなどで「ビッグデータ」という言葉を頻繁に耳にするようになりましたが,私たちが耳にする「ビッグデータ」は,収集した膨大なデータを分析し,活用することまでを意味することが多いように思います。

旧来のデータベースでは,作成段階から予め定められた目的でデータを収集・蓄積するため,収集・蓄積されたデータは,予め定められた目的の範囲を超えて使用することはできません。

他方,ビッグデータでは,有意性があるか否かを問わず,膨大な情報を収集・蓄積した上でデータを分析し,何らかの有意性を見出して何らかの処理を行ってくれます。

つまり,ビッグデータへの注目,ビッグデータへの期待というのは,私たちが予期していなかった情報群の意義を見出し,それに基づく成果を提供してくれるところにあります。

このことの裏返しが,「AIは人の知的活動の場まで奪っていく。」という不安ということになるのでしょう。

確かに,ビッグデータと深層学習の技術は,人が時間を費やして獲得する経験や勘といったものを補い,知的労働の種類によっては大きな部分を代替してくれるようになるのかもしれません。
しかし,それは,人による知的労働の内容や質を高めるための補助となることも意味しています。

ところで,政府の知的財産戦略本部が発表した知的財産推進計2017に示された課題として,

  1. 学習に用いるデータ群の利活用促進
  2. 学習済モデル(学習結果)の保護
  3. AIが創作したモノの権利

が挙げられています。

学習に用いるデータ群や学習結果(創作性のないもの)については,現在の法律では不正競争防止法の営業秘密として保護する以外にありません。

不正競争防止法では,?秘密として管理され,?有用で,?非公知の技術情報,営業情報に対する一定の行為が不正競争行為にあたるとして,差止請求,損害賠償請求が認められており,裁判では,対象となる情報が秘密として管理されていたか否かが問題になります。

裁判所では,秘密保持契約(NDA)を締結した上で開示された場合には秘密管理性が失われることがないと考えられていますので,NDAを取り交わすことで他社にビッグデータを提供したことで即座に不正競争防止法による保護が得られなくなるというわけではありません。

しかし,提供先の企業で管理が行われおらず漏洩した場合などには秘密管理性が失われることになり,ビッグデータを他社に提供することに二の足を踏み,結果としてビッグデータが有効に活用されないということになりかねません。
知的財産推進計2017では,企業が二の足を踏まないような契約内容を提示していくとされていますが,ビッグデータを受入れる側の体制の整備がビッグデータ活用の肝になると思います。

現在,グーグルやアマゾン,アップルのような世界的な規模でプラットフォームを提供する一部の企業が膨大な情報を握っており,今後も,膨大な情報を入手していくことになると思います。

産業機器,家電,自動車など私たちの身の回りに存在する多くの機器にAIが用いられるようになるとビッグデータを握る企業の協力なくして製品開発を行うことができないという状況になり,既に,以前では想像することができなかった企業間の提携がはじまりつつあります。

ビッグデータの活用に関しては,このような世界規模で起きつつある問題を世界的に議論する必要があると思います。

AIが創作したモノの権利についてですが,発明にしても,著作物にしても人が創作過程の主たる部分に関与することが前提になっているため,創作された部分に人の関与がない場合には,現在の法律では保護されることがありません。

個人的には,人が創作の重要な部分に関与していないモノを特許法や著作権法によって保護する必要はないと考えていますが,AIが創作したモノを人が制作したと申告することによって保護を図ろうとする「なりすまし」問題を懸念しているところです。

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