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テレビ番組のインターネット配信会社 再生手続

テレビ番組をインターネットで配信するサービスを提供している米国エレオが,マンハッタンの連邦破産裁判所に対して,米国連邦破産法チャプター11(会社再生手続)の申立てをしました。

エレオは,ウォルト・ディズニー傘下のABC ,CATV最大手コムキャスト傘下のNBC,21世紀フォックスなどの放送事業者から著作権法に違反しているとの理由でサービスの差止め求める訴訟を提起されていて,平成26年6月に最高裁で放送事業者側の主張を認める判決が下されており,事業の継続が危ぶまれていました。

エレオは,裁判手続において,放送電波上のシグナルは無料であり,自社のサービスは消費者にネットベースで番組を視聴できる選択肢を与えるものにすぎないため,著作権違反にはあたらないと主張していましたが,エレオの主張は退けられた形となりました。

日本の著作権法に基づいてエレオが行っていたサービスを法的に判断すると,放送事業者の権利,有線放送事業者の権利を侵害することになります。

著作権法では,著作物を創作する著作権者著作物を世の中に伝達する著作隣接権者に様々な権利を与えて保護を行っています。

著作物は,これを創作する者とこれを伝達する者とがあってはじめて世の中に広めることができ,両者の存在があって文化の発展に寄与することができるという考えに基づいているのです。

日本では,著作物を伝達する者として保護されているのは,放送事業者(無線),有線放送事業者に加えて,実演家(俳優や演奏家など),レコード製作者がいます。

放送事業者や有線放送事業者には,放送を複製する権利,再放送や有線放送する権利,放送内容をインターネット上で送信する(送信が可能なようにサーバーにアップする行為も含みます。)権利,影像を拡大して公に伝達する権利が与えられています。

エレオのサービスは,日本では,放送事業者や有線放送事業者のインターネット上で送信する権利が侵害されたと評価されます。当然,米国においても同様の評価を受けることになります。

放送事業者や有線放送事業者を含めた著作隣接権の侵害は,著作権の侵害と同様に刑事罰の対象となり,テレビ放送をインターネットで配信している者が多数検挙されていることはご存じのとおりです。

エレオは,有限な放送チャンネルを独占している既存の企業に対して,新たな技術やサービスを提供することで挑戦したわけですが,法律の壁は高かったようです。

放送チャンネルというものは万人の共有財産です。しかし,放送チャンネルを使用して様々な著作物を伝達するには多額の費用を要するものであり,放送に関与している企業の投下資本の回収の機会を提供する必要があります。

その両者のバランスを図るものとして著作権法が存在するわけですが,インターネットや端末の技術が普及している現在では,放送事業者が保護される範囲について議論があってしかるべきであると考えています。

その意味で,エレオのサービスに関する最高裁判決や,今回のチャプター11の適用は,議論を行うにあたってのきっかけになるのではないでしょうか。

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