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【離婚問題】 盗み見た情報は証拠たりえるか?

 某ミュージシャンと女性タレントとの,スマートフォンでのやりとりの内容が,週刊誌に流出して話題になっています。相手以外が見ることはないと思って送受信していた私的なメッセージや写真が,いつの間にか第三者に取得されたようです。st203.jpg

 さて,第三者によるこうした行為の道義上の可否はともかく,実務的には下記のような問題があります。(以下は架空の設例です)

 夫の日頃の行動を怪しんでいた妻が,夫が入浴しているすきに,「いけない。」と思いつつも,つい携帯電話を盗み見してしまいました。するとそこには,夫の浮気を裏付けるメールが。やがて夫婦関係が悪化して離婚訴訟に発展し,妻が夫の不貞の証拠としてこのメールを裁判所に提出した場合,裁判所はこれを妻に有利な証拠として扱ってくれるでしょうか。
今回は,民事事件における証拠の扱いについて,刑事事件と対比しながら考えてみたいと思います。

 民事事件も刑事事件も,裁判の審理は,両当事者が自分の主張に沿う証拠を裁判所に提出する形で進みます。
例えば,離婚訴訟において,夫の不貞を主張する妻側は,夫の浮気をうかがわせる言動などについて,物的証拠や証言を集め,裁判所に提出します。
また例えば,窃盗罪で訴追されている被告人が,自分は犯人ではないと主張しているとき,検察側は,犯行現場をとらえた防犯カメラ映像などを,弁護人は犯行時のアリバイを裏付ける証拠などを,それぞれ裁判所に提出し,自分たちの主張を認めてもらおうとします。

 もっとも,それらの証拠のうち,裁判所が判決の元とするのは,証拠として用いることが適格な証拠,すなわち「証拠能力」のある証拠のみです。

 そして,証拠能力について,刑事裁判と民事裁判では異なった考え方をしています。

 刑事裁判においては,当該証拠を得た過程に重大な違法があれば,その証拠を排除して審理をしなければならない(証拠能力を認めない),という判例法上のルールがあります。
 例えば,パトロール中の警察官が,職務質問する際,相手が所持品検査を拒否したにもかかわらず,強引にバッグを奪い,中に入っていた携帯電話の発着信履歴等を確認した場合などがこれにあたりえます。令状や承諾なくこのような行為をすることは違法なので,仮に携帯のやり取りから犯罪の証拠が得られたとしても,裁判ではその証拠はなかったものとされる可能性があるというわけです。

 rikon002.jpg一方,民事事件においては,証拠の採用は緩やかで,原則としてどのような証拠にも証拠能力は認められます。
例えば,離婚訴訟では,ときとして,探偵が配偶者とその浮気相手との密会の現場を盗撮した写真や,相手に無断で録音した会話が証拠として提出されることもあります。裁判官は,出された証拠をすべて勘案し,自由な心証に基づいて判決を書くわけです。

 以上からお分かりのように,冒頭の事例でも,妻が夫の携帯から無断で得たメールには,証拠能力は認められ,妻側に有利な証拠として扱われる可能性は高いといえます。
 つまり,民事裁判手続上は,「その証拠をどのようにして得たか。」はともかく,「その証拠がどのくらい自分の主張に沿うものか。」が重要とされ,強い証拠を持っている当事者が,やはり裁判上も有利になることが多いといえます。
 
(芝原好恵)

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