政府は、遺言書が作成されていた相続において、相続の課税対象となる遺産総額から一定の控除を行い、相続税を軽減する制度の検討を行っていることを明らかにしました。
従前、相続税の基礎控除は、5,000万円+(1,000万円×相続人の数)でしたが、平成27年1月1日以降の相続については、3,000万円+(600万円×相続人の数)となり、相続税の課税対象となる事例が増えるとともに、相続税の納税額も増額しました。
この基礎控除に加えて、遺言書が作成されている相続においては数百万円程度の基礎控除を加算するというのが検討されているものです。
遺言書が作成されている相続というのは全体の20%から30%といわれており、遺言書が作成されていないことが相続を紛争化させる主な原因であるといわれています。そして、相続が紛争化すると、相続開始から10か月以内に行わなければならない相続税の申告を円滑に行うことができない、相続税法上の軽減措置の恩恵を受けることができないというデメリットがあります。
さらに、紛争の期間中、相続財産に手を付けることができず、空き家が放置される、預貯金や株式などが長期間放置されるという事態が発生し、不経済であると言われてきました。
政府は、遺言を普及させて遺産相続をめぐる紛争を抑止し、若い世代へのスムーズな資産移転を図ることを目的として、相続税の「遺言控除」という制度の新設を検討しているようです。
遺言控除の制度が開始する以前に作成されていた遺言書に適用されるのか、公正証書遺言、秘密証書遺言、自筆証書遺言のいずれにも適用されるのか等、詳細な内容については未だ確定していないようですが、「遺言控除」が新設され、遺言書が普及しますと相続の紛争化を一定程度抑制することができると思われます。
「遺言控除」の制度については、今後の議論を注視していく必要があります。
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スター綜合法律事務所「相続・遺言」
弁護士 冨宅恵