九州電力川内原発1・2号機の再稼働差し止めを求めた周辺住民らの仮処分申立てに対し、鹿児島地裁は、平成27年4月22日、住民らの申立てを退ける決定が下されました。
関西電力の高浜原発につき、4月14日に再稼働を認めない仮処分の決定が下されており、原発の再稼働差止めについては司法判断が分かれる形となりました。
なお、高浜原発の再稼働差止の仮処分については関西電力が福井地裁に対して異議の申立てを行なっていますが、平成27年11月に予定している再稼働への影響は避けられないと言われています。
ところで、原発再稼働問題は、周辺住民の意見を尊重することは当然のこととしても、その可否を司法手続、しかも仮処分という仮の決定を得る手続において判断することに疑問を持っています。
そもそも、司法手続は対立する両当事者の主張、それを裏付ける証拠に基づき判断される手続ですので、原発問題についても、地元住民と電力会社の主張、双方が提出した証拠のみによって判断されることになり、地元住民以外の国民の主張、政府がもっている膨大な資料は判断にあたり考慮されません。
そして、仮処分という裁判所において仮の決定が下される手続においては、非公開の場で審理が行われ、手続も迅速に行わなければならないという手続の性質から、より一層原発の再稼働の可否につき馴染まない手続ではないかと考えています。
原発の問題は、一国のエネルギー政策に関わる問題であることから、全ての国民に影響する問題です。
そのような問題については司法手続により判断するのではなく政治の手続において判断されるべきものであると考えています。
残念ながら、先の国政選挙においては、国民の間に原発再稼働問題が存在することがあまり認識されていなかったのではないかと思います。
そして、その原因は、各党が原発に関する政策を掲げておきながら、それを前面に押し出していなかった、国民に訴えてこなかったところにあると思います。
当時、既に、原発再稼働問題については司法手続において争われていましたが、このことを多くの人の間で認識されていたとは思えません。
今回、二つの異なる司法判断が下されたことを契機に、原発再稼働について国を挙げて議論をすべきときにきているのではないかと考えています。
弁護士 冨宅恵