空き家対策
空き家対策

空き家の利用

空き家は、所有者や共有者が自ら使用しないことにより発生しているわけですから、第三者による使用を模索しなければなりません。
空き家を第三者に賃貸するにあたって建物を改装する必要がある場合が少なくありません。同じく費用を投入するのであれば、空き家が存在する地域性、空き家を利用する需要者層を把握した上で、それらに沿った形で改装を行うことを検討する必要があります。

また、空き家の多くは、賃貸マンションと比較して延床面積が大きいというメリットがある一方で、建築から年数が経過していることから若者が好む内装や機能に欠けるというデメリットがあります。

st311.jpgこのような、あなたが所有する空き家のメリット、デメリットを十分に把握した上で、空き家が存在する地域の地域性、それによって決定される需要者層を設定した上で改装工事を行わなければ、投下した費用を回収できないという事態に至ります。
例えば、比較的高齢の方が多く住む地域であるならば、多額の費用を費やして現代風な意匠を凝らす必要はなく、高齢の方特有の利便性を追求した改装を行うべきです。他方、若者の利用が期待できる地域であるならば、建物の古さ、延床面積の広さを最大限利用したクラシックモダンな建物に改装するということも考えられます。

地域性や需要者層を正確に把握し競争力をもった建物に改装することは誰にでもできることではありません。「空家等対策の推進に関する特別措置法」の制定が検討されるようになったころから、民間業者による「空き家ビジネス」が活発になっており、多くの業者が「空き家無料診断」を行い、改修工事の提案、改修工事の見積もり、賃料収入の試算を無料で行ってくれるようになりました。
また、インターネットにおいては、多数の不動産業者の情報に基づき地域ごとに賃貸需要をカラーマップで表示しているものもあります。

これら無料で提供されているツールを積極的に活用し、第三者に賃貸し賃料収入を得る方法を模索することが空き家対策の基本となります。

地域コンテンツの活用

人口の比較的少ない地域であっても空き家を魅力的な物件に変身させることができるならば、収益物件として成立します。しかし、空き家の利用を考える場合、投下する費用と回収できる賃料収入とのバランスを常に検討する必要があります。空き家を魅力ある物件に変身させることができたとしても、投下した費用を回収するのに10年以上もかかるようであれば、賃借人が変わるたびに内装を変更する費用を要する、10年も経過しないうちに中規模の改装を要することを考慮すると採算がとれていないと考えるべきです。

投下する費用と賃料収入のバランスを考えた場合、改修することができる内容範囲に自ずと制限が生じ、他の物件と差別化を図ることができないということも少なからず存在します。
このような場合には、それぞれの地域に眠る「コンテンツ」を積極的に取り込んだ改修も検討すべきです。

st322.jpg国土交通省は、新しい宅地造成を控え、代わりに空き家や中古住宅の活用を促す方針を打出しています。また、政府の「まち・ひと・しごと創生本部」は、地方活性化策の一つとして、地方で急増する空き家をリフォームして手ごろな家賃で移住者が住めるようにする、育児世帯がリフォームして住む際の補助制度を拡充する方針を打ち出しています。
複数の自治体では、既に、景観や伝統的な大工技法を保護することなどを目的として、古民家を積極的に活用する支援事業を行っていますが、政府の方針に沿った新たな補助制度が設けられるものと思われます。このような自治体の支援を受けることも選択肢の一つとして認識しておいてください。

さらに、土地・建物の所有者から「空き家」情報を集め、地方の「空き家」を探している人に「空き家」情報を提供する「空き家バンク」を運営している地方の自治体が日本全国には200以上あり、登録するだけで奨励金を支払う自治体も少なくありません。民間の不動産業者だけでなく、自治体の「空き家バンク」を積極的に利用して賃借人を探す努力をされるべきです。

短期利用者に対する部屋の提供

地域によっては、月単位、さらには週単位で住居を利用する方が一定数います。
これらの需要に応えているのが「マンスリーマンション」、「ウィークリーマンション」と呼ばれているものです。
このような月単位、週単位の部屋の利用は、短期間で移転することが前提となっているため大量の荷物を移動することが前提とはなっていませんので、比較的狭いスペースの提供だけで足りる傾向にあります。

このような短期間の建物賃貸においては、法的に予め定められた日に明け渡しを求めることができる権利を留保しておく契約を締結することになります。このような賃貸借契約を一時使用目的賃貸借契約と呼びます。

通常の賃貸借契約では、予め期間が定められていたとしても、期間の到来とともに更新を拒否することができるわけではなく、賃貸借契約を更新しない正当な理由が存在しなければ拒否することはできません。そして、賃貸人側の正当な理由は非常に限られた場合にのみ認められ、予め期間を定めていたとしても結果的に期間の定めのない賃貸借契約になってしまいます。
他方、一時使用目的の賃貸借契約においては期間の満了とともに賃借人に対して立退きを求めることができます。
一時使用目的の賃貸借契約は、通常の賃貸借契約と比較して賃借人の賃借権が弱いものとなるため、単に契約書に「一時使用目的」であることが明記されていればよいのではなく、賃貸人が募集にあたり一時使用に限定することを明確に示している、賃借人の側に一時的に使用する理由、賃貸借の期間が短期に留まっている等の事情が必要になります。

st315.jpg主に観光客等、一時的にも居所として滞在しない者を対象とした場合には旅館業であると認定され、旅館業の許可を得ることが求められる可能性があることに注意しなければなりません。仮に、旅館業の許可が必要となりますと、耐震性、防火性等様々な行政基準をクリアーしなければならず、多くの空き家がこの基準をクリアーすることは困難であると予想されます。

旅館業であるか賃貸業であるかの区別は曖昧なところがありますが、旅館業と認定する目安として以下のものを示しています。

  • 利用者と一か月未満の利用契約を締結している。
  • 利用者が生活の本拠としていない。
  • シーツ・寝具の交換,部屋の清掃などの衛生上の維持管理をオーナーサイドで行っている。

規制改革会議の提言

内閣府に設置されている規制改革会議は、平成27年6月16日、「規制改革に関する第3次答申〜多様で活力ある日本へ〜」において、空きキャパシティの再生・利用、小規模宿泊業のための規制緩和、老朽化マンションの建て替え促進、都市再開発における手続きの合理化などについて言及しています。

具体的には以下のとおりとなっています。

  • 廃校の利活用促進
  • 既存不適格建築物の用途変更時に係る規制の運用の整理・明確化
  • 既存不適格建築物の増築時に係る規制の見直し
  • 検査済証のない建築物に対する既存不適格調書の手続の合理化、及び法適合状況 調査のためのガイドラインの運用改善
  • 用途変更を伴う建築行為に係る基準の見直しと運用の改善
  • 住居専用地域における住民介護・看護用の事務所設置
  • 遊休期間の別荘貸出し
  • 賑わい空間としての活用
  • 住民による維持管理の取組促進

この他にも、小規模宿泊業のための規制緩和として、イベントなどを実施する際の民泊における規制緩和、さらには、イベントのときだけでなくインターネットを使って恒常的に自宅を使って宿泊サービスを提供するという空きキャパシティ活用についても検討されます。なお、空き家・空き部屋を旅館業法の適用除外対象として訪日外国人旅行客向けに宿泊施設として開放することが可能となる戦略特区を設定することになっています。

これらの規制緩和が行われますと、現状では空き家として放置せざるを得ない建物であったとしても、収益を生む建物に生まれ変わらせることが可能となります。
規制改革会議の提案内容については、スピード感をもった議論が勧められ、政府が推進する地方の空き家対策が実効性を帯びることを期待するばかりです。

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