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医療過誤

予後の説明義務違反

  • 人工股関節置換手術の予後についての説明義務違反
  • 東京地裁平成15年3月27日判決の事例参照
  • 805万円の支払いを命じた事例

ケース

【手術を受ける経緯】

私は、以前から左股間接痛を抱えており、変形性股関節症と診断されました。

私は、イスラム教徒で日々礼拝をするのですが、礼拝時の痛みが大変なもので、きちんと正座をすることができませんでした。
なお、私は肉体労働を行っていたのですが、仕事をしているときにも痛みがあるものの、仕事時の痛みは耐えきれないほどのものではありませんでした。

そこで、私は、イスラムの礼拝時に行う正座の痛みを解消する目的で、人工股関節置換手術を受けることにしました。

【手術前の説明】

私は、手術を受けるにあたって、正座をすることができなくなる、仕事についても軽作業しかできなくなる、10年〜15年後に再度の手術が必要になるということを全く聞いていませんでした。

【手術の実施及び骨折の発生】

私は、8月11日、病院を訪れ、医師の診断を受け、手術を受けるべきであると言われ、手術を受けました。
その後、入院治療を行っていたのですが、9月21日に左股関節脱臼が発生し、脱臼の整復を行ってもらったのですが、その際、左大腿骨遠位に螺旋骨折が発生しました。

質問

私は、礼拝時に痛みを感じることなく正座ができるようになるために手術を受けました。
また、手術を受けたことによって、以前働いていた仕事を行うことができず、再手術の必要性についても何も聞かされていませんし、普段の生活で靴下を容易に脱いだり履いたりできなくなるという説明も聞かされていません。

仮に、正座ができなくなったり、重労働などができなくなったりするのであれば、人工股関節置換手術を受けることはありませんでした。
十分な説明を行わなかった医師に責任はないのでしょうか。

説明

【人工股関節置換手術】

変形性股関節症とは、股関節(骨盤の臼蓋と大腿骨の大腿骨頭からなる関節)の軟骨が破壊もしくは変形を起こし、軟骨下骨、骨の変形まで生じ、関節が変形する疾患のことです。

変形性股関節症の末期では、人工股関節置換術以外に改善を図る方法がありません。
人工股関節置換術を行った場合は、正座をすることは推奨できず、正座を可能とする目的でこの手術を行うことはありません。

そして、人工股関節置換術の適応かどうかは、股関節痛、ADL(日常生活)の支障、跛行の程度、股関節の可動域、その他の症状、レントゲン写真の所見、患者の希望等を総合して考えます。

【東京地裁の判断】

判決では、医師の人工股関節置換術の適応性に関する判断に誤りはないとされました。

また、手術前に、患者から礼拝時に行う正座を問題なく行えるようにするために、手術を受けるという明確な説明がなかったことから、この患者に対して人工股関節置換術を行った点についても問題はないとしています。

そして、医師には、患者から積極的な質問がないにもかかわらず、手術に先立って正座を行うことを推奨しないこと、靴下の着脱がスムーズに行えるかどうかについて医師に説明する義務はないとされました。

ところが、患者が手術以前に従事していた重労働が行えなくなるという点については、医師が十分な説明を行っているとは認められず、これについては患者の生活にも大きく関わってくる問題であるので、説明義務違反が認められました。

また、脱臼後の整復については、医師が脱臼の整復を行う際に、第二次的な被害ともなる骨折の発生について何らの考慮も必要ないということはできず、脱臼の整復時に医師が骨折を生じさせないよう注意する義務を負うのは当然のことであるとし、特に、人工股関節置換術後のことであり、本件手術に伴い脚長差の矯正を行っていること、患者の体格、筋肉の緊張の程度等を考慮すると、骨折の発生が予見できないものではないと判断しました。

そして、整復を担当する医師としては、骨折発生の危険性も念頭におきつつ整復を行うべきであったのに、これを怠り、その結果として本件骨折を生じさせたと結論づけました。

結果、説明義務違反及び骨折を引き起こした責任で、医療側に対し約805万円の賠償を命じました。

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