- 乳児の大腿骨骨折についての過失
- 東京地裁平成15年1月27日判決の事例参照
- 104万円の支払いを命じた事例
ケース
【事実経過】
私は、1月4日、帝王切開術により子供を出産しました。
1月9日の生後検診では子供に異常はみとめられず、1月10日の体温と脈拍数についても異常が認められませんでした。
ところが、1月11日早朝、体温が38度2分まで上昇し、昼ころにも38度あり、脈拍数も毎分約150回と高い値を示していました。
【他院への入院】
子供は、1月12日にはいったん解熱しました。このとき、看護師は子供の左下肢の動きが鈍いことを認めていました。
1月13日朝になって、子供の左大腿部に腫脹と発赤が認められ、圧痛も強く認められるようになりました。
私は、午前10時30分ころ、子供を出産した病院へ電話をしたところ、○○病院へ連れて行くよう告げられました。
そして、午前11時ころ、○○病院の小児科を受診したところ、左大腿骨の骨折が判明しました。
質問
病院は、骨折した時期や場所については不明であるが、私のミスで子供が骨折したと主張しますが、私には子供が骨折するような事について見覚えがありません。
入院中に子供が骨折しているのですから、子供の骨折につき病院に責任はないのですか。
説明
【裁判所の判断】
裁判所は、病院の新生児に対する監視義務について次のように判示しました。
「病院の医療従事者には、新生児を入院させてその看護をする場合、新生児が退院するまでの間、新生児に骨折のような不測の事態が発生しないように十分な監視をする義務がある。ただし、新生児が個室の病室内で母親の監視下にある場合には、病院の医療従事者が新生児に対し十分な監視をすることは不可能であるから、このような監視義務を負うことはない。」
そして、裁判所は、子供が骨折した原因について特定できないものの、子供の症状から病院入院中に骨折したことを認め、この結果、母親の監視下において骨折したことは認められないとして病院の医療従事者の監視義務を認め、子供が骨折したことについて監視義務違反の不法行為が成立すると判断しました。
以上を前提に、裁判所は、子供の入通院費用等として約104万円の支払いを命じました。