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多重債務問題

引直計算方法・充当の問題に関する裁判例

最高裁判所第3小法廷昭和46年3月30日判決(判タ263号202頁)

【問題となった争点】
数個の債務について元本のほかに費用、利息を支払うべき場合において、弁済する者がその債務の全部を消滅させるに足りない給付をしたとき、数個の債務の費用、利息、元本にどのように充当されるか。

【判決の要旨】
「民法491条1項によれば、数個の債務について元本のほかに費用および利息(遅延損害金を含む。)を支払うべき場合において、その債務の全部を消滅させるに足りない給付をしたときは、費用、利息、元本の順序によりこれを充当すべきであるが、同条2項により、それら数個の債務の費用相互間,利息相互間,元本相互間における充当の方法について同法489条が準用される結果、数個の債務についての費用、利息は各債務の元本より先に充当されるべきものとなるのである」

【解説】
本判決は、数個の債務がある場合には、個別に費用、利息、元本の順序に充当するのではなく、各債務の費用・利息から先に充当し、次にそれぞれの元本に充当すべきであると判断したものであり、契約上各債権が別口であるか否かを考慮することなく、すべての取引を一連として計算することを認めたものです。

最高裁判所第3小法廷昭和48年9月18日判決(金融法務事情701号32頁)

【問題となった争点】
制限超過利息を元本に充当した場合、次の利息の計算は充当後の元本金額を基礎とすべきか、充当前の元本の金額を基礎とすべきか。

【判決の要旨】
「制限超過の利息・遅延損害金の支払いがされたときは、その超過部分は法律上当然元本に充当され、」「その残元本についてのみ利息・遅延損害金を生ずることとなるので、利息・遅延損害金が法定の制限内であるかどうかは、右の残元本を基準として算定すべきものである」

【解説】
st006.jpg本判決は、制限超過利息の定めのある金銭消費貸借契約の利息の計算について、制限超過利息を元本に充当した結果、減額された元本額を基礎に利息が計算されることを明らかにしたものです。

最高裁判所第2小法廷平成15年7月18日判決(民集57巻7号895頁)

【問題となった争点】
基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において発生した過払金は、その時点で存在する別口の借入金債務へ充当されるか。

【判決の要旨】
「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けとその返済が繰り返される金銭消費貸借取引においては、借主は、借入れ総額の減少を望み、複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常」である。
「弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果当該借入金債務が完済され、これに対する弁済の指定が無意味となる場合には、特段の事情のない限り、弁済当時存在する他の借入金債務に対する弁済を指定したものと推認することができる。」
「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において、借主がそのうちの1つの借入金債務につき法所定の制限を超える利息を任意に支払い、この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合、この過払金は、当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り、民法489条及び491条の規定に従って、弁済当時存在する他の借入金債務に充当され」る。

【解説】
本判決は、一つの基本契約に基づく金銭消費貸借取引について過払金が発生した際に、別口の借入金債務が存する場合、当事者間の合理的意思を根拠に、特段の事情のない限り、過払金は別口の債務に充当されると判断したものとしたものです。

最高裁判所第3小法廷平成19年2月13日判決(民集61巻1号182頁)

【問題となった争点】
貸主と借主との間で継続した金銭消費貸借取引を行う旨の基本契約が締結されていない場合において、第1の取引に関して発生した過払金は、第2の取引に基づく貸付金に充当されるか。

【判決の要旨】
「貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合において、第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し(以下、この過払金を「第1貸付け過払金」という。)
その後、同一の貸主と借主との間に第2の貸付けに係る債務が発生したときには、その貸主と借主との間で、基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されており、第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていたとか、その貸主と借主との間に第1貸付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情のない限り、第1貸付け過払金は、第1の貸付けに係る債務の各弁済が第2の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず、第2の貸付けに係る債務には充当されないと解するのが相当である。」
「なぜなら、そのような特段の事情のない限り、第2の貸付けの前に、借主が、第1貸付け過払金を充当すべき債務として第2の貸付けに係る債務を指定するということは通常は考えられないし、第2の貸付けの以後であっても、第1貸付け過払金の存在を知った借主は、不当利得としてその返還を求めたり、第1貸付け過払金の返還請求権と第2の貸付けに係る債権とを相殺する可能性があるのであり、当然に借主が第1貸付け過払金を充当すべき債務として第2の貸付けに係る債務を指定したものと推認することはできないからである。」

【解説】
本判決は、継続した金銭消費貸借取引について「基本契約」が締結されていない場合において、「基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されており、第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていたとか、その貸主と借主との間に第1貸付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情」が認められない限り、第1の取引に関して生じた過払金を第2の取引に基づき生じた貸付金に充当することを否定しました。
制限超過利息は当然に残元本に充当されるという考え方からすれば、一つの金銭消費貸借取引に基づいて生じた過払金については、別口の債務にも当然充当されるはずでした。
ところが平成15年7月18日付最高裁判決が、別口債務への充当の根拠として当事者の合理的意思に言及したため、その表面上の文言が一人歩きした結果、本来ならば充当の問題とは無関係であるはずの「当事者の意思解釈」を根拠に、本件でも充当が否定されたものと考えられています。

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