1.執行猶予のメリット
たとえ実刑判決を受けたとしても、執行猶予付きの判決であれば刑の執行が一定期間猶予され、すぐに刑務所に入る必要がありません。そして、執行猶予期間が満了すれば刑の言渡しが取り消され、刑務所に入ることを免れることができるのです。
執行猶予を獲得できなければ、拘置所で身体を拘束されている場合には、これに続いて刑務所で身体を拘束されることになり、保釈などで身体が解放されていたとしても再び身体を拘束され刑務所に送られることになります。
刑務所に送られることの最大のデメリットは、それまでに形成してきた社会生活が分断され、学校や職を失ってしまうことにあります。また、刑務所に送られると再び職に就くのが難しく社会に馴染むまでに一定程度の時間を要することになります。さらに、いわゆる刑務所仲間というものができてしまえば、出所後に新たな犯罪に手を染める危険性も高まります。
仮に、実刑判決を受ける場合であったとしても、執行猶予を得ることができるか否かで大きな違いがあるのです。
2.執行猶予を得るために
残念ながら、執行猶予を得るためこれだけ行っておけば大丈夫というようなものはありません。しかし、経験上、以下に示すことを行っていれば執行猶予を得ることの可能性が高まります。
示談を成立させておく
犯罪による被害が回復されているか、被害者の処罰感情が和らいでいるかという点は、裁判所が刑を決定するにあたり非常に重視する点です。ですから、執行猶予を得るためには、判決までに被害者と示談しておくことが非常に重要になります。
なお、そもそも被害者がいない犯罪行為や被害者が示談に全く応じない場合には示談を成立させておくことは不可能です。このような場合には、罪をあがなうための寄付を弁護士会等に行うことによって示談に代えることができます。ただし、被害者が示談に応じない場合については寄付を行っても被害者の処罰感情が和らいでいませんので示談の成立と比較して効果が劣ることは否定できません。この意味でも示談を成立させておくことの重要性を認識することができるのではないでしょうか。
真摯に反省していることを伝える
裁判所は、犯罪を行った人が真摯に反省しているか否かを見ています。
そして、真摯に反省している人は、裁判所における態度や発言内容に現れるものです。
執行猶予を得るためには、裁判所での態度や発言内容についても十分に考えておかなければなりません。
再犯のおそれがないことを示す
裁判所は、釈放すれば再び犯罪を繰り返す可能性がある人に刑を受けることなく社会に戻すことはしません。
裁判所が安心して執行猶予付の判決を下すことができるためには、判決後に社会に戻ったとしても再び犯罪を行う可能性がないことを示す必要があるのです。
再販の可能性がないことを示すには、本人の固い決意、犯罪を繰り返さない環境の設定、家族などの協力が不可欠となり、判決までに裁判所に理解してもらえる形で整えておく必要があります。
家族などの協力
執行猶予を得るためには、家族や雇用主による監督、指導など、周りの人たちの協力が不可欠であり、刑事裁判においてもこれらの人たちの協力が必要になります。