再生計画案の提出(開始決定から3ヶ月)
再生計画とは、再生債権者の権利の全部又は一部を変更する条項その他民事再生法154条に規定する条項を定めた計画になります(民再2条3号)。
再生計画は、通常は再生債務者が、管財人が選任されている場合は管財人が、裁判所が定める期間内に、裁判所に提出することになります(民再163条)。
再生計画には、
- 全部または一部の再生債権者の権利の変更(民再154条1項3号)
- 共益債権及び一般優先債権の弁済(民再154条2項)
- 知れている開始後債権があるときは、その内容(民再158条)
- 未確定の再生債権に関する条項(民再159条)
- 別除権不足額に対する的確措置条項(民再160条1項)
を記載しなければなりません。
また再生計画による権利変更の内容は、原則として再生債権者間で平等でなければなりません(民再156条)。但し、不利益を受ける再生債権者の同意のある場合や、少額再生債権、手続開始後の利息等請求権については例外的に別段の取扱も認められます。
なお、弁済期間は特段の事情のある場合を除いて、再生計画認可確定から10年以内で定める必要があります(民再155条3項)。
その他、再生計画では次のような事項を定めることができます。
事業譲渡に関する条項
民事再生手続においては、再生計画外の事業譲渡も可能ですが、再生計画内で事業譲渡を行うことも可能と解されています。この場合、株主総会の決議に代えて、裁判所の代替許可によっても事業譲渡可能です(民再43条)。
株式の取得に関する条項(民再154条3項)
再生債務者が債務超過の場合、予め裁判所の許可(民再166条1項、2項)を得て、自己株式を再生計画により取得することができます。
株式の併合に関する条項(民再154条3項)
再生債務者が債務超過の場合、予め裁判所の許可(民再166条1項、2項)を得て、再生計画により株式を併合することができます。
資本金の額の減少に関する条項(民再154条3項)
再生債務者が債務超過の場合、予め裁判所の許可(民再166条1項、2項)を得て、資本金の額を再生計画により減少することができます。
再生債務者が発行することができる株式の総数についての定款変更に関する条項(民再154条3項)
募集株式を引き受ける者の募集に関する条項(民再154条4項)
再生債務者が非公開会社であり、債務超過の場合で、再生債務者の事業の継続に欠くことができないと認められる場合、予め裁判所の許可(民再166条1項、2項)を得て、資本金の額を再生計画により減少することができます。
これによって、再生計画により第三者割当増資を行い、スポンサーからエクイティの形式で資金を受け入れることが可能となります。
根抵当権の極度額を超える部分の仮払に関する条項(民再160条2項)
再生計画案の決議
裁判所は、提出された再生計画案について、決議に付する旨決定をします(民再169条)。この際、決議権行使の方法について、債権者集会期日で行使する方法(集会型)か書面等投票による方法(書面型)、両者を併用する方法(併用型)を定めることになります。 決議は、議決権行使をした議決権者の過半数の同意(頭数要件)と、議決権者の議決権の総額の1/2以上の議決権を有する者の同意(議決権行使額要件)の両方を満たすことにより可決されます(民再172条の3第1項)。
再生計画案の認可
再生計画案が決議された場合、裁判所は、不認可事由の存否を審理の上、不認可事由の認められない場合は、再生計画認可決定をすることになります(民再174条1項、2項)。
不認可事由としては、(1)再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき、(2)再生計画が遂行される見込みがないとき、(3)再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき、(4)再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するときがそれぞれ挙げられます(民再174条2項)。
- 再生計画が法律の規定に反しているとは、例えば弁済条件が平等性を欠いているような場合が挙げられます。
- 再生計画が遂行される見込みがないとは、文字通り再生計画に実現可能性がない場合を言います。
- 決議が不正な方法によったとは、贈収賄や再生債権者に対し、特別の供与があった場合などが典型です。
- 再生債権者の一般の利益に反する典型は、再生計画に定められた弁済率が、破産手続の配当率を下回るような、清算価値が保障されていないような場合です。
再生計画認可の決定が確定すれば、再生債務者は、再生計画に定められ、また民事再生法により認められた権利を除き、全ての再生債権について原則として免責されることになります(民再178条)。
再生計画の履行
再生計画認可決定が確定したときは、再生債務者は、速やかに再生計画を履行していくことになります。
監督委員が選任されている事件では、再生計画が遂行されたとき、または再生計画認可の決定が確定した後3年を経過したときに、裁判所より終結決定がなされることになります(民再188条)。
再生計画が履行されない場合は、再生計画の取消(民再189条)、再生計画認可後の手続廃止(民再194条)等が行われることになります。