取引先が倒産に備えて財産を隠匿した、懇意にしている取引先や親族に対する返済を優先して行っているという事例が少なくありません。
このような行為は、あなたの会社の犠牲のもと、取引先が債権逃れをしている、特定の債権者だけが回収している行為であり絶対に見過ごすことができません。
法律においても、このような行為は認められておらず、債権者には、このような不正な行為を取消す権利が与えられています。
これが債権者取消権です。
債権者取消権は、債務者の一般財産を保全するため、とくに取消債権者において、債務者受益者間の詐害行為を取り消したうえ、債務者の一般財産から逸失したものを、総債務者のために、受益者または転得者から取り戻すことができるものとした制度です。
債権者取消権は、全ての債権者のために行う権利であるため、取消権を行使した場合には不正な行為を行った取引先に対して財産を戻すということが原則になります。しかし、判例では一貫して、取消権を行使した債権者に対して引渡しを求めることを認められています。この場合、取消権を行使したあなたの会社は、取引先に対して取消しにより引渡された物を返還しなくてはなりません。しかし、不正を行った取引先ですから、そのような会社に返還すると再び財産を散逸させてしまう可能性があります。
そこで、あなたの会社が返還を求められた場合、あなたの会社が有する債権との相殺権を行使して返還を拒否することができます。この結果、あなたの会社は、優先的に回収を行うことができます。
債権者取消権を行使するためには、あなたの会社が詐害行為が行われる前に取引先に対して債権を有している必要があります。但し、あなたの会社の債権は、履行期が到来していなくても問題ありません。
債権者取消権の行使の対象になるのは、あらゆる財産行為です。
- 安価で財産を売却した
- 不動産を現金化した
- 特定の債権者に対してのみ担保権を設定した
など、あなたの会社が取引先から回収することが困難になるような行為が取消しの対象となります。
債権者取消権は、裁判手続で行う必要があります。
また、詐害行為を知ってから2年(詐害行為のときから20年)経過すると行使することができなくなります。
詐害行為を放置しますと、取引先の先でも財産が散逸する可能性が高まりますので,早期発見、早期対処が非常に重要になります。