MBO(EBO)は、経営者(従業員)が株主から株式を取得することであるから、対象となる企業が単独株主である場合には当該株主と株式譲渡について交渉することになり、複数株主である場合には複数の株主と株式譲渡について交渉することになります。
複数の株主が存在する場合には、原則として個々の株主と個別交渉を行い、株式取得にあたり支払う対価についても当該株主ごとに異なることになります。しかし、経営者(従業員)がMBO(EBO)を行うとき、通常であれば株式の100%取得を目指すことになり、100%の株式が取得できないのであれば、そもそもMBO(EBO)を行わないという場合も存在します。ところが、複数の株主に対し、順番に交渉していきますと、交渉に長けた株主などは、最後の最後まで株式を譲渡せず、最後に不当に高額な対価を要求してくることがあります。
また、最初に譲渡すること避けたいという株主がいると、両すくみ状態になり株式買取交渉が全く進展しないという事態に陥ることもあります。また、株式の大半を取得したにもかかわらず残余の株式を取得することができず、経営に株主意向が強く反映されてしまうという不都合が生じる可能性がありますし、原則として株式取得を撤回することができない、撤回できても支払った対価が返還されないという不都合が生じる可能性もあります。
以上の不都合を回避するため、複数の株主と個別に交渉するのではなく、全株主を一同に集めて意向を確認し、株式取得条件を統一して交渉するという手法を採用すべきです。
また、対象となる企業が上場会社である場合には、金融商品取引法により一定割合の株式を取得する際には公開買付け(TOB)により株式を取得する必要があります。