日本と異なり、アメリカには電子商取引に関する一般法が存在し、UCITAと呼ばれています。将来、日本においても電子商取引に関する一般法の整備が行われること考えられますので、参考のために紹介します。
UCITAとは、Uniform Computer Information Transaction Act(統一コンピュータ情報取引法を指します。本法は、アメリカ模範法典であり、各州の議会において可決されるとそれぞれの州において法的効力を有することになります。
UCITAは、顧客に使用許諾契約(シュリンクラップ契約)を要求するコンピュータ・ソフトウェアやデータベース等のデジタル情報に関する取引が規制の対象となっています。ですから、顧客に使用許諾契約を求めないマルチメディア(音楽・映画・放送等)は対象とはなりません。
そして、UCITAは、書面性の要件の放棄、シュリンクラップ契約の有効性、提供情報の保証、準拠法、裁判管轄等について規定をしています。
UCITAは、コンピュータ・ソフトウェアやデータベース等のデジタル情報を対象とした取引に関する世界初のモデル法で、今後の日本における電子商取引に関する法律にも影響を及ぼすものと思われますのでご紹介します。
書面性の放棄
アメリカにおいては、基本的に署名された書面の作成が契約成立要件となっており、オンライ上の情報取引契約についても同じ取扱いがなされていました。ところが、UCITAにおいては、この署名された書面に代わり認証された記録(ディジタル記録を含む)があれば契約が成立すると規定されています。
シュリンクラップ契約の有効要件
ソフトウェアの購入者がパッケージの封を破ることによって使用許諾契約に同意したものとみなす契約方式のことをシュリンクラップ契約といいます。
このシュリンクラップ契約が法的に有効となるために、以下のいずれかの要件を充たす必要があります。
- 事前に検討する機会が与えられ、同意を表明した場合。
- 事前に検討する機会が与えられていない場合には返金を受ける権利が与えられている場合。
上記したいずれかの要件を充たしている場合にも、公序良俗に反する条項や既に行われた明示の合意と異なる標準条項は無効となります。
提供情報の保証
売主は、合意が存在しなくとも以下の提供情報に関して保証責任(黙示の保証責任)を負うことになります。但し、黙示の保証責任は、太字、大文字、着色文字、縁取文字等により顕著な表現により契約条件を記載することで免責されます。
- 平均的な商品性に関する保障
- 提供情報の正確性
- 特定目的への適合性(但し、情報提供者がシステムインテグレータの場合で、結果達成の対価を受領した場合に限ります。)
準拠法
契約当事者の合意により決定されます。
合意されていない場合には、B2B契約の場合にはライセンサーの所在地法、B2C契約の場合には商品の引渡地法によることになります。
裁判管轄
契約当事者の合意により決定されます。