特許出願するか否か
特許出願を行い特許権を取得した場合、技術の内容は公開されてしまいますが、出願から20年間は独占権が認められます。ただし、このことは、技術の内容を競業者に開示し、研究材料を与えることになります。また、保護される期間が限定されるという不利益もあります。
他方、秘密情報として管理し続けた場合、競業者に秘密情報が開示されることもありませんし、秘密状態が維持される限り期間の限定なく保護を受けることができるというメリットがあります。
ただし、秘密の状態を維持し続けることが可能であるか、あるいは秘密状態を保つために、かえって多額の費用を要する可能性もあります。
このように、情報を特許権として保護する方法、、ブラックボックス化する方法のいずれについても、一長一短があるといえます。
判断基準
どのような基準で、権利化するかブラックボックス化するかの選択を行えばよいのでしょうか。判断基準としては、①技術情報の性格、②維持コストの面から、以下に示すような要素が判断要素になると言われています。
技術情報の性格
物の発明か、製造方法の発明か
物の発明の場合には、製品を分析する等して技術情報を調べることが容易なことがあります。
このような情報を秘密状態で維持するのは不可能な場合が多いといえます。
他方、製造方法の発明は、閉鎖された工場などで行われている場合、第三者に明らかになりにくい傾向にあるといえます。
リバースエンジニアリングにより判別できるか否か
技術の耐用年数
技術の耐用年数が短い場合には、長期間にわたって秘密状態を維持する必要がありません。
権利化かブラックボックス化かの判断において、技術の耐用年数は非常に重要になります。
他社が技術的に到達可能か
自社独占技術か標準を目指す技術か
秘密管理が可能か
先使用権の立証可能か
先使用権の説明については項目を改めて行います。
実用化までの期間
事業計画に関する情報流出は、商品情報の流出よりも圧倒的に大きなダメージになります。事業計画に関する情報は、漏洩の可能性が高く、事業化するまで死守しうるかという問題があります。ですから、事業計画に関する情報については、秘密維持の可能性について慎重な判断が必要になります。
維持コスト
情報を秘密状態で維持するには、多大な費用を要することがありますので、ブラックボックス化を選択する際には、将来発生する費用を想定しておく必要があります。
物理的、人的、組織的管理を総合的に整える必要
大がかりな対応を継続的に迫られる場合には、人的・物的面で相当の費用発生が発生するため権利化して公開することも検討すべきであると考えます。