知的財産
知的財産

先願主義

最も早く出願した者に権利が帰属する

早い者勝ちの先願主義特許権は、対象となる特許を独占的に実施できる権利です。このことを特許権は、独占的排他権を有する権利であると表現されています。

この独占的排他権を認めるには、一つの特許には一つの特許権しか認めることができません。
そこで、特許法は、仮に、偶然同一の特許を発明したとしても、最も早く特許庁に出願した者にしか特許権を与えません。

特許法は、いわゆる「先願主義」を採用しているのです。先願か後願かの判断は、「出願の日」を基準に判断します。

新規性の判断基準は「」ですが、先後願の判断基準は「」が基準とされています。

なお、最近ではオンライン出願が一般的となっておりあまり問題とはなりませんが、郵送による場合には公平をきすため特許庁に願書が到達した日ではなく、発信した日を基準に考えます。

先願主義は、特許権の独占的排他性によるものですので、同一の出願人にも適用されます。

先願か後願かは、出願人が権利取得を求める特許請求項に記載された特許を対象に検討します。したがって、明細書や図面に記載された発明については先後願の対象にはなりません。

2以上の請求項がある場合には、請求項ごとに判断します。

偶然同一の特許が同日に出願された場合には、特許庁は出願人間での協議を促し、いずれかの特許のみ特許権を与えます。

仮に、協議が整わなかった場合には、いずれの特許も特許権として認められませんので、必ず協議を成立させる必要があります。
協議内容としては、一方の出願人に特許権を帰属させ、他方の出願人には無償の通常実施権を設定し、いずれの出願人も出願した特許を使用できるようにしておくというものが考えられます。

協議の結果については、協議結果届出命令により特許庁に届出をしなけば協議不成立と取扱われいずれの特許も特許権を得られないということになりますので、注意が必要です。

拡大された先願

先後願は、特許請求項を対象として判断します。
ですから、第三者が出願された願書の明細書に記載された発明を出願しても後願出願とはなりません。

しかし、特許権という独占的排他権を与えるのは、特許を世の中に公開することの代償としてです。明細書に記載され既に世の中に公開されている発明を特許として出願しても、何ら新しい特許を世の中に公開していないにもかかわらず独占排他権を取得するということになります。

そこで、自ら明細書において特許を世の中に公開した者以外の者が、特許掲載公報に掲載され、出願公開された願書に添付した明細書や請求項、図面に記載された特許と同一の特許については、これが特許掲載公報や出願公開される前に出願した場合であっても特許権を受けることができないことになっています。

これは、一般的に「拡大された先願」と呼ばれています。「拡大された先願」が適用される要件は、以下のとおりです。

先願の特許

当然のことながら、後願の特許より先に先に出願された特許に関する願書が対象です。また、後願の特許出願後に、特許掲載公報が発行、出願公開されていることが必要です。なお、特許掲載公報の発行後、出願公開後の後願特許の出願は単純に新規性がないとして拒絶されます。

後願の特許

後願の請求項に記載された特許が、先願の請求項、明細書、図面に記載された特許と同一あるいは実質的に同一である場合が対象となります。

なお、先願の明細書等に補正により削除されたものも対象に含まれます。

異なる出願人

「拡大された先願」は、あくまで新たな特許を公開することになっていないので独占的排他権を与えないというところに制度趣旨がありますので、先願の出願人と異なる者が対象になり、先願の出願人自身は対象にはなりません。

よって、先願の出願人は、明細書等が公開される前であれば、明細書等に記載された発明を出願することができます。

冒認出願

発明者でない者が何らの権利もなく出願(これを「冒認出願」といいます。)した場合に、真の発明者が明細書等に記載された特許を出願できないのは不合理ですので、同一の発明者についても「拡大された先願」は、適用されません。

拡大された先願の利用法

拡大された先願は、先願の出願人は、権利を取得することまでは考えていないが、第三者に権利を取得されたくないという場合に利用されます。

つまり、先願人は、出願の際に、第三者に特許権を取得されたくない特許を明細書等に記載しておくのです。

すると、後願の出願人は、自ら発明を行っていたとしても、拡大された先願により特許権を取得することができなくなります。

ページトップへ戻る

〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目11番22号
阪神神明ビル 2F

  • JR大阪駅より徒歩11分
  • JR北新地11-41番出口より徒歩8分
  • 地下鉄東梅田7番出口より徒歩10分
  • 地下鉄淀屋橋1番出口より徒歩10分
  • 地下鉄南森町2番出口より徒歩10分
  • JR新大阪駅より車10分