知的財産
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編集著作物・データベースの著作物

個々の編集対象が問題となるのではなく、編集の仕方が問題となる

編集著作物

編集著作物とは、大阪地裁昭和60年3月29日「商業広告事件」判決によると、英語単語帳、職業別電話帳のように単なる事実、データを素材にして編集したものか、百科事典、新聞・雑誌、論文集のように既存の著作物を素材にして編集したもので、一定の方針あるいは目的の下に多数の素材を収集し、分類・選択し、配列して作成された編集物でなければならないとされています。
選択や配列の方法そのものを保護するのではなく、あくまで編集物が保護の対象となります。
よって、他人の選択や配列方法を参考に異なる素材の編集を行った場合、他人の編集著作物を侵害したことにはなりません。

なお、編集物の個々の素材が著作物である場合には、当然のことながら個々の著作物の著作者の許諾を得る必要があります。
個々の著作物の著作者の許諾を得ていない場合も編集著作物として保護されますが、個々の著作物に対する著作権を侵害するということになります。

東京地裁平成11年2月25日「松本清張小説リスト事件」判決では以下のとおり判示されています。
「著作権法により編集著作物として保護されるのは、編集物に具現された素材の選択・配列における創作性であり、素材それ自体の価値や素材の収集の労力は著作権法によって保護されるものではない。

他方、名古屋地裁昭和62年3月18日「用字・実用字便覧事件」判決では次のとおり判示されています。
「編集著作物における独創性とは、学問的な完全無欠さを要求するものではなく、素材の選択又は配列に、何らかの形で人間の精神的活動の成果が顕れていることをもって足りると解すべき。

また、東京地裁平成8年9月27日「四谷大塚試験問題集事件」判決では以下のとおり判示されており留意が必要となるところです。
「編集著作物における創作性とは、従前見られないような選択又は配列の方法を採るといった高度の創作性を意味するものではなく、素材の選択又は配列に何らかの形で人間の創作活動の成果が顕れていることをもって足りると解すべき。

さらに、東京地裁昭和59年5月14日「アメリカ語用語集事件」判決では以下のように判示され、素材の選択の余地と創作性の判断との関係について判断している点についても意識が必要なところといえるでしょう。

「素材の選択の幅が限られている場合には、同一のものを選択しなければ、いずれか一方の学術的価値に疑問を生じることにもなりかねず、これをもって先行の選択行為を模倣したというのは適当でない。これに対し、素材の選択の幅が広く、先人の著作物を参考とした上で、なお、独自の選択を行うことがいくらかでも可能であり、異なる素材を選択しても、それが適切な者である限り学術的価値を損なうおそれがないときまで、安易に先人の選択した素材をそのまま又は一部修正して利用することは、その素材の選択に費やされた先人の努力に只乗りすることであり、学術的著作物といえども、先人の選択行為を模倣したとのそしりを免れないものというべきである。」

データベースの著作物

データベースの著作物とは、論文、数値、図形その他の情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索する事ができるように体系的に構成したものをいい、コンピュータの検索機能等によりデータベースから特定のデータを抽出できるように、統一的・系統的に整理されたものを指します。
なお、データベース検索用プログラムは、別個のプログラムの著作物(10条1項9号)として保護されることになります。

著作物として保護されるデータベースは、「情報の選択」あるいは「体系的な構成」に創作性が備わっているものに限られます。

ただし、当該分野のデータを全て集積するデータベースであれば「情報の選択」に創作性が認められないため、「体系的な構成」に創作性が求められることになります。

「情報の選択」については、編集著作物の「素材の選択」と同様に考えれることになります。

「体系的な構成」は、コンピュータを用いて効率的な検索ができるような「体系的な構成」に創作性があるか否かを検討することになります。

なお、創作性には、特許のような新規性・進歩性は求められていません。
東京地裁平成12年3月17日「タウンページデータベース事件」判決は、次のように判示し、データベースの著作物に求められる創作性の程度を知る手がかりになると思われます。

「タウンページデータベースの職業分類体系は、検索の利便性の観点から、個々の職業を分類し、これらを階層的に積み重ねることによって、全職業を網羅するように構成されたものであり、原告独自の工夫が施されているものであって、これに類するものが存在するとは認められないから、そのような職業分類体系によって電話番号情報を職業別に分類したタウンページデータベースは、全体として、体系的な構成によって創作性を有するデータベースの著作物であるということができる。」

なお、東京地裁平成13年5月25日「自動車整備業務用データベース事件」判決は、以下のとおり判示し、データベースの著作物と認められなくとも、損害賠償請求だけは認められる可能性があることを示す重要な裁判例です。

(データベースは、情報の選択及び体系的な構成いずれも創作性が認められず、著作物性が否定さるが、)「人が費用や労力をかけて情報を収集、整理することで、データベースを作成し、そのデータベースを製造販売することで営業の活動を行っている場合において、そのデータベースのデータを複製して作成したデータベースを、その者の販売地域と競合する地域において販売する行為は、公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会において、著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害するものとして、不法行為を構成する場合があるというべきである。」

データベースの著作物の対象となる個々のデータに著作物性が認められる場合、編集物の著作物同様、個々のデータの著作権者の同意が必要なりますので注意してください。

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