知的財産
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商品形態模倣の請求主体

cont_img_67.jpg以前の商品には存在しない新たらしく,何らかの創意工夫が施された商品を模倣した商品を販売する行為などが不正競争行為となり,差止め,損害賠償の対象となります。

では,このような商品形態模倣を理由に差止めや損害賠償を求めることができる者は,誰なのでしょうか。

新たな商品というのは,一般的に開発,製造,卸,流通の過程を経て消費者のもとに届きます。

模倣品の流通により消費者が偽物を購入することになった,単に偽物というだけでなく粗悪品を購入することになってしまったという被害が発生します。

しかし,不正競争防止法は,市場における公正な競争秩序の維持を図る法律であり,消費者の保護を目的とする法律ではなく,このような消費者被害は別の法律によって手当てすることになります。

ですから,消費者が請求の主体になることはありません。

流通,卸,製造の各業者については市場に模倣品が出回ることで競争力を削がれたり,売上を減少させたりといった被害が発生します。

また,上記のような各業者は,不正競争防止法による公正な競争秩序の維持を求めていくことができる立場でもあります。

しかし,これらの業者についても商品形態模倣を理由に模倣品の販売などの差止めや損害賠償を求めることはできません。

そもそも,不正競争防止法が先行する商品形態を模倣した商品を販売する行為などを不正競争行為と定めたかというと,先行する者に投下資本の回収の機会を提供するためです。

新たな商品形態を開発するためには,費用,時間,労力を費やす必要があります。そして,商品によっては,投下する費用,時間,労力が莫大なものとなることもあります。

このようにして開発された商品の形態を自由に模倣することができるならば,新たな商品形態を開発しようとするものがいなくなります。

そこで,不正競争防止法では,販売開始から3年間という限られた期間においては,先行する商品形態を模倣した商品を販売する行為などを不正競争行為として差止め,損害賠償の対象としたのです。

このような不正競争防止法の趣旨を前提にしますと,新たな商品開発に関与していない流通,卸,開発者から製造のみを委託された製造の各業者は,商品形態の模倣を理由に差止め,損害賠償の請求を行うことができないということになるのです。

それでは,開発者から独占的な販売権を取得して販売している者は請求することができるのかという問題があります。

一般的に特定の商品を独占的に販売するためには,独占販売権を取得するための対価を支払ったり,実際の売行きとは関係なく一定数の仕入れを行う,開発者の商品イメージを損なわないために店舗内装などの店舗内イメージ(トレードドレス)の変更を求めたりなど,一定のリスクを負担することになります。

独占販売権の設定を受けるといっても,そのことによるリスクは様々ですが,場合によっては新商品の開発者に匹敵する程度の投下資本を投入したり,リスクを負担するという場合があります。

このような場合には,不正競争防止法による差止請求や損害賠償請求が認められてもよいような気がします。

そして,大阪地裁では,一定のリスクを負担している独占販売権者に不正競争防止法による差止め請求や損害賠償請求を認めた裁判例が存在します。

しかし,私の考えでは,不正競争防止法の商品形態模倣は,新たな商品開発に対する投下資本の優先回収に留まり,その範囲から拡大して新たな商品を独占的に販売するにあたっての投下資本の回収までは含まれないのではないかと考えています。

新商品開発のインセンティブを損なわせないということと,新商品を世の中に広めたいというインセンティブは質的にことなるものですし,後者の者を不正競争行為から保護する必要性があるのかということも定かではありません。

仮に,このような独占的販売権者に対しても不正競争防止法による保護が必要であるというのであれば,それは法律の解釈ではなく,立法的な手当てを行うべきではないかと考えています。

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