知的財産
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意匠の類否判断は物品の類否判断から

s016.jpg意匠と物品は一体不可分の関係にあり,意匠法には異なる物品に意匠権が及ぶ旨の規定が存在しないため,異なる物品に意匠権は及びません。

ですから,物品が異なる場合には異なる意匠となります。

では,類似する物品に意匠権が及ぶことになるのでしょうか。

この点についても意匠法には具体的な規定が存在しないため検討する必要があります。

ある物品に施された意匠を類似する物品に施すということは誰しも容易考えつくことであり,仮に,このような行為が認められれば,新たなデザインを創作しようとする意欲が損なわれることになります。

他方で,登録された意匠に類似する物品に対して他人の意匠をフリーライドして利益を得ることを認めるという合理的な理由もありません。

よって,意匠権は,同一の物品のみならず類似する物品に対しても及ぶと考えるべきです。

異なる物品に対して意匠権が及ばないが,類似する物品に対しては意匠権が及ぶということ前提にする限り,意匠権の効力が及ぶか否かを決定する「意匠の類否判断」においては,物品の異同,類否の判断から行えばよいということになります。

仮に,物品が異なるという判断に至りますと,それ以上の検討を行うことなく異なる意匠であるという結論に至り,思考経済に合致します。

では,物品の異同,類否は,どのような方法によって判断することになるのでしょうか。

物品というものは,「用途」と「機能」が備わっています。

ですから,物品の異同,類否についても比較する物品の「用途」と「機能」を比較すればよいことになります。

例えば,大阪地裁平成17年12月15日「化粧パフ事件」判決では,化粧パフとゲルマニウムシリコンブラシが類似する物品といえるのかということが問題となりました。

化粧パフは,みなさんもご存じのとおりファンデーションや白粉を顔に塗布するものです。

他方,ゲルマニウムシリコンブラシは,洗顔用のブラシです。

このことだけを前提にすると,両者は用途も機能もことなりますので異なる物品ということになります。

ところが,化粧パフ事件の原告は,化粧パフが洗顔に利用されることを示す証拠を複数提出し,裁判所においても化粧パフが洗顔に利用されることが認められました。

化粧パフがファンデーションや白粉を顔に塗布する以外に洗顔の用途にも使用されるものであるということになりますと,化粧パフとゲルマニウムシリコンブラシとは,一部,「用途」と「機能」が同一ということになり,少なくとも類似する物品ということになるのです。

そして,物品が類似すると判断されますと,比較する意匠の形態の比較を行います。

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