知的財産
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意匠法により保護される意匠

cont_img_21.jpg意匠とは,「物品の形状,模様,若しくは色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるもの」をいいます。

このような意匠が全て特許庁において登録され法的に保護されるわけではありません。

意匠のうち,特許庁に登録されて保護されるのは,新規性を備え,創作が容易ではないものに限られていてます。

新規性を備えるということは,出願時点において既に存在する意匠ではないことを意味しています。

意匠法では,

  • 意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
  • 意匠登録出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠

が新規性を有さない意匠として登録が認められないと規定されています。

さらに,意匠法では,上記した二つの意匠だけではなく,公然知られた意匠,あるいは刊行物などに記載された意匠に類似する意匠も新規性がないとして登録が認めらません。

つまり,公然に知られた意匠や刊行物などに記載された意匠だけでなく,これらの意匠に類似する意匠も法的には公然知られた意匠や刊行物などに記載された意匠と同一であると判断され,登録が認められていません。

公然知られた意匠や刊行物などに記載された意匠と類似するか否かについてはどのように判断するのでしょうか。

登録された意匠の権利が及ぶ範囲は,意匠法では,登録された意匠と同一の意匠と,これに類似する意匠であると定められています。

「意匠の類似」という問題は,登録のための要件においてのみ問題になるのではなく,登録された意匠権の範囲を考える上でも非常に重要な概念となります。

ところが,この「意匠の類似」についてどのように考えるかについて,学者の間でもまさしく百家争鳴なところがあり,それぞれの学者によって異なる説明が行われてきました。

また,これらの学説の影響を受けて,裁判所においても異なる判断方法で意匠が類似するか否かの判断が行われるということが長く続きました。

学説において様々な主張が行われることについては良いのですが,裁判所によって意匠の類否判断の方法が異なるということは,裁判所の考え方次第で結論がことなるということになり判断の予測ができないことを意味しています。

そして,このような状態を放置すると裁判所に対する信頼が失われることを意味しています。

裁判所において判断の方法が異なるということは,現在社会においては俄かに信じがたいことですが,意匠の類似判断においては長年そのような状態が継続していたのです。

このような状態が継続してきたからこそ,専門家の間でも「意匠というものがよくわからない」という言葉や,意匠権を侵害するかどうかの予測が付かないという言葉をよく耳にしました。

類似する意匠であるか否かの判断(意匠の類否判断)については,大きく区別すると二つの異なる考え方がありました。

混同説という考え方と創作説という考え方です。

意匠法が,いずれの考え方も採用していないということが理解されるようになってきましたが,現在においても,「意匠の類否判断」を学ぶ際に,混同説や創作説,さらには修正混同説や修正創作説という名称で,様々な考え方を教えている方がいると聞きます。

意匠の類否判断の方法が混沌としていた時代に様々な考え方が存在したということを向学的に理解するためにこれらの考え方を理解するというのであれば問題ありません。

しかし,実務的に「意匠の類否判断」を理解するということだけを考えるならば,混同説か創作説か,さらには修正混同説なのか修正創作説なのかという議論は,全く無益と言っても過言ではありません。

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