知的財産
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パブリシティ権

パブリシティ権とは、固有の名声、社会的評価、知名度等を獲得した著名人の氏名、肖像等が有する顧客吸引力であると解されています。
このような著名人のパブリシティ権は、裁判例によって認められる権利であり、著名人のみが有する人格的権利です。

著名人のパブリシティ権

裁判例では以下のように判示して、著名人のパブリシティ権を認めています。

固有の名声、社会的評価、知名度等を獲得した著名人の氏名、肖像を商品の宣伝、広告に利用し、あるいは商品そのものに付することにより、当該商品の販売促進に効果をもたらすことがあることは一般によく知られている。これは、著名人に対して大衆が抱く関心や好感、憧憬、崇敬等の感情が当該著名人を表示する氏名、肖像等に波及し、ひいては当該著名人の氏名、肖像等と関連づけられた商品に対する関心や所有願望として大衆を当該商品に向けて吸引する力を発揮してその販売促進に効果をもたらす結果であると理解できる。その結果、著名人の氏名、肖像等は、当該著名人を象徴する個人識別情報としてそれ自体が顧客吸引力を持つようになり、一個の独立した経済的利益ないし価値を具備することになる。そして、このような著名人の氏名、肖像等が持つこのような経済的な利益ないし価値は著名人自身の名声、社会的評価、知名度等から派生するものということができるから、著名人がこの経済的利益ないし価値を自己に帰属する固有の利益ないし権利と考え、他人の不当な使用を排除する排他的な支配権を主張することは正当な欲求であり、このような経済的利益ないし価値は、現行法上これを権利として認める規定は存しないものの、財産的な利益ないし権利として保護されるべきである。このように著名人がその氏名、肖像その他の顧客吸引力のある個人識別情報の有する経済的利益ないし価値(パブリシティの価値)を排他的に支配する権利がいわゆる「パブリシティ権」と称されるものである。

そして、裁判例では、パブリシティ権の効力として、排他的にパブリシティの価値を支配する権利であることを理由に、無断で氏名、肖像その他顧客吸引力のある個人識別情報を利用するなどパブリシティの価値を侵害する行為がなされた場合には、不法行為に基づく損害賠償請求権が認められるのみならず、当該侵害行為の差止めや侵害物の廃棄等を求めることができるとされています。

また,最高裁平成24年2月2日判決においては,「人の氏名,肖像等(以下,併せて「肖像等」という。)は,個人の人格の象徴であるから,当該個人は,人格権に由来するものとして,これをみだりに利用されない権利を有すると解される(氏名につき,最高裁昭和58年(オ)第1311号同63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁,肖像につき,最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月23日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁,最高裁平成15年(受)第281号同17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁各参照)。そして,肖像等は,商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり,このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)は,肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから,上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる。他方,肖像等に顧客吸引力を有する者は,社会の耳目を集めるなどして,その肖像等を時事報道,論説,創作物等に使用されることもあるのであって,その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もあるというべきである。そうすると,肖像等を無断で使用する行為は,①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し,③肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,パブリシティ権を侵害するものとして,不法行為法上違法となると解するのが相当である。

と判示されています。

物のパブリシティ権

大衆が、著名人に対すると同様に、特定の物に対して関心や好感、憧憬等の感情を抱き、右感情が特定の物の名称等と関連づけられた商品に対する関心や所有願望として、大衆を当該商品に向けて吸引する力を発揮してその販売促進に効果をもたらすような場合があることを理由に、物の名称等そのものが顧客吸引力を有し、経済的利益ないし価値(パブリシティの価値)を有するものと観念されるに至ることもあることを理由に物のパブリシティ権を認める裁判例がありました。

ところが、最高裁は、物の所有権は、その物の有体物としての面に対する排他的支配権能であるにとどまり、その物の名称等の無体物としての面を直接排他的に支配する権能に及ぶものではないから、第三者が、有体物としての面に対する所有者の排他的支配権能を侵すことなく、名称等が有する顧客吸引力などの物の無体物としての面における経済的価値を利用したとしても、その利用行為は、物の所有権を侵害するものではないと解すべきであると判示し、物のパブリシティ権を否定しました。

最高裁は、物の支配権は民法が定める権利のみであり(これを物権法定主義といいます。)、物の名称等が有する経済的価値を排他的に支配する権利を明確に否定しましたので、物のパブリシティ権については、立法がなされる、あるいは最高裁判例が変更されない限り保護されることはないと考えてよいと思います。

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