知的財産
知的財産

保護の必要性

キャラクターとはどのような意味があるのでしょうか。

広辞苑第5版(1998・岩波書店)を見てみますと、「キャラクターとは、『性格、人格、小説、映画、演劇、漫画などの登場人物。』、キャラクター商品という言葉における『キャラクター』とは、『テレビや漫画などに登場する人気のある人、動物、シンボルまたはそのイメージをいう。』とされています。

また、『キャラクター戦略と商品化権』発明協会・2頁〜6頁(牛木理一・2000)では、詳細な分析がなされており、キャラクターを次のように分類されています。

「『キャラクター』として商品やサービスに利用することができるものを全てキャラクターと定義するならば、その範囲を定義することが困難なほど広くなる。」

具体的な分類として、

  • ファンシフル・キャラクター:形態によって表現されているキャラクター(視覚的キャラクター)
  • フィクショナル・キャラクター:言葉によって表現されているキャラクター(言語的キャラクター)
  • 実在人物、動物、建築物、自動車、航空機、雑誌の表紙、人形、商品それ自体など、現実の物体で表現されているもの
  • 商標、サービスマーク、シンボルマーク、ネーミング、ワードなどで図形や文字や記号で表現されているもの
  • 企業・団体などの名前や略称などで文字だけで表現されているもの
  • その他、以上の分類に属さないすべてのもの

狭義の「キャラクター」として以下の3つに分類される。

  • 小説・物語に登場する文学上の人物
  • 漫画シリーズに登場する絵画上の人物
  • 映画やテレビシリーズで俳優が演ずる演劇上の人物

以上のように、我々は実に多くの場面で「キャラクター」という言葉を使用しており、キャラクターを一言で説明することは不可能な状況にあります。
このような中で、今回取り上げるのは、アニメーションの登場人物等のファンシフル・キャラクターです。

以降では、このファンシフルキャラクターを法的にどのように保護していけばよいのか説明していきます。

キャラクタービジネスの概要

「知的財産権とキャラクタービジネス」(梅林勲・2005)を参考に、アニメキャラクターの歴史の概要を纏めますと以下のとおりです。

                               
1970年業務用ゲーム「スペースインベーダー」の流行
1979年ハローキティ(サンリオ)
1979年機動戦士ガンダム(バンダイ)
〜ガンダムシリーズは現在でも継続している〜
1980年任天堂ゲームウォッチ登場(単体液晶ゲーム)
1981年ガンダムゲーム登場(単体の液晶ゲーム)
1983年ファミリーコンピュータ登場
1985年ファミコン用ソフト「スーパーマリオブラザーズ」登場
1986年ファミコン用ソフト「ドラゴンクエスト」登場
(累計4、100万本)
ドラゴンボールテレビ放映
(40カ国で放映)
ファミコン用ソフト「ドラゴンボール」登場
1989年ドラゴンクエステレビ放映
1996年ゲームボーイ用ソフト「ポケットモンスター赤・緑」発売
(累計1億4000万本:派生ソフト含)
1997年ポケットモンスターテレビ放映
(67カ国で放映)
(*コミック化、映画化、商品化、その他の用途については省略)
2004年コンテンツの創造・保護及び活用の促進に関する法律制定

以上のように、日本のキャラクタービジネスにおいて、アニメキャラクターとゲームは、密接に関連しており、切り離せないものとなっています。

以前であれば、コミックにキャラクターが登場し、それが売れますとテレビ放映化され、さらにそれがヒットしますと、映画化・ゲーム化されるというのが一般的な流れでした。
当然、現在においてもこのような流れでキャラクターが著名になっていくことがありますが、このような流れに加えて、ゲームに登場するキャラクターがコミック化されたり、テレビ放映されるようになり、それがヒットしますと映画化されるという流れもあります。
いわば、ゲームがキャラクターを生み出すという流れです。

それでは、著名になったキャラクターがどのように使用されているのか、「キャラクタービジネス白書」(株式会社矢野経済研究所)を参照して整理したいと思います。

まず、メディア別に分類しますと以下のとおりになります。

  • テレビ
  • 映画
  • インターネット
  • 携帯電話
  • ゲーム
  • パチンコ・パチスロ

次に、キャラクターを用途別に分類すると次のようになります。

商品化
  • 玩具・自販機用玩具市場
  • 文具市場
  • 菓子市場
  • 食品市場
  • 衣料品市場
  • 服飾雑貨市場
  • トイレタリー市場
  • キャラクター家具インテリア市場
  • その他の商品市場
広告・販促

以上、見ましたとおり、キャラクターはありとあらゆるメディアで使用され、あらゆる商品に使用されていると言ってよいと思います。

このような、キャラクターの使用に対しては、当然のことながら、権利者に対してライセンス料が支払われるのですが、日本におけるキャラクタービジネスの市場規模は、約2兆円と言われています。

また、最近、世界中で日本のテレビアニメが放映されるようになりましたが、このようなテレビアニメを中心に海外への輸出規模でいいますと、約5500億円規模であると言われています。

このように見ますと、日本において、キャラクタービジネスは、一大産業であると評価でき、キャラクターを保護するということは、日本の一大産業を保護するということでもあるのです。

キャラクター保護の必要性

キャラクターは、著名になると映画化されるのが一般的であると説明しましたが、映画製作会社は、映画を製作する際多額の支出を余儀なくされます。

また、キャラクターは著名になりますと、映画製作会社の「顔」にとなり、キャラクターが製作を行った会社の看板となるのです。

つまり、映像製作会社は、多額の費用と膨大な時間を費やして、アニメーション等に登場するキャラクターの自他識別力及び顧客吸引力を形成していると言えるです。

また、映画製作会社は、配給収入やテレビ放映権収入のみでは製作費用を回収できないというのが現状であり、商品化ビジネスにより収支バランスを整えているという面があります。

この結果、映像製作会社が、商品化ビジネスを独占的に展開し、収益獲得の機会を失うとすれば、たちまち、日本のアニメ産業は成り立たなくなるのです。

日本の一大産業と言っても過言ではないアニメーション等の産業を保護し、さらなる発展を遂げてもらうためには、映像製作会社が商品化ビジネスにより円滑に収益を得られることは非常に重要なのです。

そして、このような映画製作会社のビジネスモデルを法的に保護するために、アニメーション等のキャラクターの保護が必要不可欠となるのです。

以上のように、キャラクターを保護することとは、映像製作会社が商品化ビジネスにより円滑に収益を得られるようにするという一面があります。

そして、映像製作会社が商品化ビジネスにより円滑に収益を得られるためには、キャラクターに対する独占的支配を設定し、対価の支払いを条件として使用を許諾することができる体制を整え、それを法的にサポートしていくことが必要になるのです。

また、キャラクターを保護することとは、キャラクターが有する顧客吸引力を独占的に支配し、自ら実施する、あるいは第三者に使用を許諾する権利を保護することもいみします。

ところが、日本には、キャラクター保護法という法律は存在しません。
そこで、既存の法律によりキャラクターを保護する方法を模索しなければならないのです。

ちなみに、近時「コンテンツの創造・保護及び活用の促進に関する法律」が制定されました。
この法律は、日本のコンテンツ産業の発展を目的としており、これを達成する手段として、以下の各事項について施策を行うことを明記しています。

  • 人材の育成
  • 先端的な技術に関する研究開発の推進
  • コンテンツに係る知的財産権の適正な保護
  • コンテンツの円滑な流通の促進
  • 適切な保存の促進
  • 活用の機会等の格差の是正
  • 資金調達を図るための制度の構築
  • 権利侵害への措置
  • 海外における事業展開の促進

このように、コンテンツの一つであるキャラクターを保護するということは、国家政策の一つになっているのです。
その前提として、キャラクターを保護する方法として、現在の法律によりどのような方策がとれるのかということを検討することは非常に重要なことであると考えています。

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