訴えられた側の事前検討事項は非常に多い
知的財産権を侵害していると訴えられた場合に事前に準備しなければならないことはたくさんあります。
また、準備すべき内容は高度に専門的であるため、早期に専門家を交えて検討する必要があります。
まず、訴えられた側が検討しなければならない事項として、
特許権・実用新案件、意匠権、商標権、育成者権などの権利を本当に侵害しているのかを吟味する必要があります。
また、著作権については、問題になっているものが本当に著作物に該当し、著作権法によってほごされているのか、不正競争防止法の商品等の表示に該当するのか(周知性が存在するのかなど)、営業秘密に該当するのか吟味する必要があります。
なお、権利侵害などに該当するか否かの判断は、権利侵害の要件の項目を参照してください。
その上で、特許などの登録することにより保護される知的財産権の場合には権利に無効理由が存在しないかを検討します。
また、権利が消尽していないかを検討します。
さらに、各知的財産権法が定める実施権(法定実施権)が認められないかも検討しなければなりません。
なお、特許法の例でいいますと法定実施権だけでも以下のように複数存在します。
- 職務発明に関する使用者等の通常実施権(35条1項)
- 先使用権による通常実施権(79条)
- 無効審判の請求登録前の実施による通常実施権(80条)
- 意匠権の存続期間満了後の通常実施権(81・82条)
- 再審請求登録前の善意実施者の通常実施権(176条)
また、特許権の効力が制限される場合も、以下のように複数存在します。
- 特許発明の実施が試験又は研究のためにするもの(69条1項)
- 単に日本国内を通過するに過ぎない船舶若しくは航空機又はこれらに使用する機械、器具、装置その他の物であること(2項1号)
- 特許出願の時から日本国内にある物であること(2項2号)
- 原告が主張する特許発明が二以上の医薬(人の病気の診断、治療、処置又は予防のため使用する物をいう。)を混合することにより製造されるべき医薬の発明又は二以上の医薬を混合して医薬を製造する方法の発明である場合につき、医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する行為及び医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する医薬であること(3項)
- 特許料の追納特許権が回復した場合において、その特許が物の発明についてされているとき、特許料を追納することができる期間の経過後特許権の回復の登録前に輸入し、又は日本国内において生産し、若しくは取得した物であること(112条の3・1項)
- 特許料の追納により特許権が回復した場合につき、特許料を追納することができる期間の経過後特許権の回復の登録前における次の行為に該当すること(112条の3・2項)
- 再審により回復した特許権又は再審により設定の登録若しくは存続期間を延長した旨の登録があつた場合につき、その特許が物の発明についてされているとき、取消決定又は審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に輸入し、又は日本国内において生産し、若しくは取得した物であること(175条1項)
- 再審により回復した特許権又は再審により設定の登録若しくは存続期間を延長した旨の登録があつた場合につき、取消決定又は審決が確定した後再審の請求の登録前における次の行為に該当すること(175条2項)
以上を踏まえて本当に権利侵害となるか否かについて検討する必要があるのです。