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コーポレートガバナンス

内部統制に関する会社法の規定

大会社において内部統制が導入されることになった理由として立法担当者は以下のように説明しています。

大会社については、その活動が社会に与える影響が大きいことから、適正なガバナンスの確保が特に重要であると考えられる。また、近時の企業不祥事の事例に鑑みても、各会社において自社の適正なガバナンスを確保するための体制を整備することの重要性は一層増しているといえる。実際の訴訟においても、(中略)監視・監督義務に関しては、健全な会社経営を行うためには会社が行う事業の規模・特性等に応じたリスク管理体制(いわゆる「内部統制システム」)を整備することが必要である旨判示した裁判例も存在するところである。

ここにいう裁判例とは、大阪地裁平成12年9月20日「大和銀行事件」判決のことです。当該裁判例においては、「健全な会社経営を行うためには、目的とする事業の種類、性質等に応じて生じる各種のリスク(中略)の状況を正確に把握し、適切に制御すること、すなわちリスク管理が欠かせず、会社が営む事業の規模、特性等に応じたリスク管理体制(いわゆる内部統制システム)を整備することを要する。」「会社経営の根幹に係わるリスク管理体制の大綱については取締役会で決定することを要し、業務執行を担当する代表取締役及び業務担当取締役は大綱を踏まえ、担当する部門におけるリスク管理体制を具体的に決定するべき義務を負う。」と判示されています。
st253.jpg会社法は、上記大阪地裁判決の趣旨を法制化したものともいえなくはないのです。

ところで、取締役会は、取締役の職務の執行を監督する職務があり、監査役も取締役の職務の執行を監査する職務があり、法令もしくは定款に違反する事実があると認めるときは、遅滞なく取締役会に報告しなければなりません。
以上を前提にしますと、取締役会が決議すべき業務の適正を確保するための体制(内部統制)とは、法的には、これらの取締役、監査役の職務の実効性を確保するための体制ということになります。

会社法においては、内部統制については以下の2つのことが規定されています。

  1. 内部統制に関する事項は、重要な業務執行に関する事項であり取締役会の専決事項であること
  2. 大会社等においては、内部統制に関して決議しておくことが義務とされていること

ただし、会社法においては、内部統制について決議を行う義務がありますが、構築することまで義務化されているわけではありません。
業種、会社の規模、会社を取り巻く経済状況等により内部統制の内容は変遷していくものであり、しかも完成形というものがあるわけではありません。各社は、自社の個別的事情を考慮して内部統制を構築していくべきであり、経営者には広い裁量が認められているところです。
このような事情を考慮して、会社法では、内部統制の構築義務まで義務化されていないのです。

しかし、会社法が内部統制の構築義務を課していないことをもって何ら意味のないことであると考えることも誤りです。

st258.jpg経営者が内部統制の基本方針について決議するということは、内部統制により定めなければならない項目につき、どのようなリスクが存在するかを検証し、リスクに対して如何なる体制を整えるべきかを検討することを意味しています。
つまり、経営者は、基本方針として決議すべき項目を決定することにより、その項目に関して適切な調査義務、検討義務が生じることとの関係で、基本方針として決議した項目につき問題が発生した場合に適切な調査を行っていなかったとして任務懈怠責任が認められるということになります。

取締役の任務懈怠責任を認めるという意味において、会社法の規定は法的に意味のあることなのです。

また、内部統制に関する決議は一度行っておけばよいというものではなく、継続的な義務として経営者に課されています。
社会情勢や会社の状況の変化にともない会社が抱えるリスクの内容も変化します。内部統制に関する決議の内容が、ときどきに会社が抱えるリスクに対応していなければ、改めて内部統制に関する決議を行う法的責任が課されることになるのです。

ところで、平成27年6月1日より上場会社においてはコーポレートガバナンスコードが適用されるようになりました。
コーポレートガバナンスコードは、「実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの」であり、「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図れることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展に寄与する」ものとして、以下の5つの基本原則から構成されています。

  1. 株主の権利・平等性の確保
  2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  3. 適切な情報開示と透明性の確保
  4. 取締役会等の責務
  5. 株主との対話

会社法で定められる内部統制についても、将来、コーポレートガバナンスコードにおいて定められた水準にまで引き上げられることが予想されるところですので、コードで定められた内容を踏まえた内部統制の確立が望まれるところです。

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