事例
企業Aと企業Bが、契約締結を前提に事前交渉を重ね、それを前提にBが費用をかけて各種準備行為を続けてきたが、契約直前になって、Aが契約を拒否して白紙撤回した。
分析
Bが契約締結を前提に時間と費用をかけて各種準備行為を行い、それをAが了知しているにもかかわらず、一方的に契約締結を拒否する行為は、不法行為だけでなく債務不履行としてとしても、Aに損害賠償責任が発生する場合がある。
関係法令、判例等
民法709条、415条
最高裁昭和59年9月18日判決(判例時報1137号51頁)等
「取引を開始し契約準備段階に入ったものは、一般市民間における関係とは異なり、信義則の支配する緊密な関係にたつのであるから、のちに契約が締結されたか否かを問わず、相互に相手方の人格、財産を害しない信義則上の義務を負うものというべきで、これに違反して相手方に損害を及ぼしたときは、契約締結に至らない場合でも契約責任としての損害賠償義務を認めるのが相当である。」(原審東京地裁昭和56年12月14日判決(判例タイムズ470号145頁)